不安定な時期でのアプリマーケティング – エキスパートに尋ねました
世界は、これまでに経験したことのない現実に直面し、企業にとっても従業員にとっても非常に不安定な経済状況に対応しなければなりません。コロナウイルスはすでに世界の市場に大きな打撃を与えています。一部の産業や地域ではこれが深刻であり、景気後退の気配が色濃くなっています。
このような状況で、マーケティングの今後はどうなるのでしょうか。他の多くの業界で収益の減少が見られていますが、アプリについては同じことが当てはまるとは限りません。
AppsFlyerはコロナウイルスの感染拡大によるマーケティングへの影響と傾向を見てきたことで、モバイルアプリには多くのチャンスがあることがわかりました。実際、この数週間で多くのアプリカテゴリで利用が増加し収益が大幅に増加しています。これは、家にとどまっている多くの人が、アプリで用事を済ませたり、他の人とコミュニケーションをとったりしているからです。
不安定な時期、そして潜在的な可能性がある時期のマーケティング予算の管理方法をよく理解するため、異なる地域そして業種をリードするアプリから3名のエキスパートにお話を伺います。
Manav Sethi氏は、2,600万人以上の有料ユーザーと1億8,000万人の登録ユーザーを抱え、インドのエンターテイメント業界をリードするグローバル企業の1つであるEros International社のグループ最高マーケティング責任者です。
Shay Ze’ev Yosifon氏は、Lord of the BoardやSpades Royaleなどの常に人気のゲームを擁するカードゲームやボードゲームのトップ企業の1つであるBeach Bum社のマーケティングVPです。
Stephanie Pierce氏は、アメリカで最も売れているパーソナルファイナンスソフトウェアのメーカーである is the Head of Growth Marketing at Quicken社のグロースマーケティング部門の部長です。Quicken社は、新しいパーソナルファイナンスアプリSimplifi by Quickenを最近リリースしました。
それでは、お読みください。
マーケティング費
AppsFlyer:今後のマーケティング費はどうなるとお考えですか? 多くの人が家にとどまっているので、短期的には、多くの業種でアプリのアクティビティの使用が増加しています。一方、景気後退の気配が強まり、失業する人も出てきており、消費者のLTVが低下する可能性があります。長期的に見たときに、この状況がマーケティング費に影響を及ぼすことは明らかです。皆さんの企業では、この状況をどう考えていますか?
Shay Ze’ev Yosifon:興味深い質問ですね。短期的には、相反する2つの傾向が見られると思います。ユーザーがデバイスを利用してアプリのコンテンツを利用する時間が増えるのに従って供給が増加しますが、一部のカテゴリでは需要が減少して競争が激化することになります。
エンターテイメント、特にゲームでは、競争が激しいのは間違いありません。すべての大手企業が積極的に動いているので、競争は続くことになります。一部の企業は、今がチャンスであることを理解しているので、ユーザーのスクリーンタイム(画面を見ている時間)を獲得するための競争が激化することになります。
長期的に見たときに、不況は来ると思います。不況はすべての人の懐事情に打撃を与えるものではありますが、それでもユーザーはエンターテイメントを必要とすると思います。一種の逃避行動だと言う人もいるかもしれませんが、少しのあいだ悩みを忘れる方法としてエンターテイメントが求められます。
したがって、一部のカテゴリの収益に対し、コロナが必ずしも大きな影響を与えるとは思いません。影響はあるかもしれませんが、状況に応じて企業はアプローチを変化する必要があります。それが、当社のお客様への対応方法であり、お客様を維持する方法です。そして、確実にお客様に楽しんでいただく方法でもあります。有料ユーザーでなくても、その方法は変わりません。
中期的には、収益は減少すると思いますが、長期的には回復すると見ています。
(AppsFlyer:Beach Bum社のゲームのジャンルであるカジュアルゲームの最新のセッション数と収益の傾向は、以下のグラフでハイライト表示しています)
Stephanie Pierce:2008年から2009年に起こった前の不況の時は、私はデジタルメディア業界にいたのですが、担当していた一部のクライアントは広告費を削減していました。しかし、今回は状況が異なりますし、類似点を挙げるのは困難です。どのくらいの期間この状況が続くかもわかりませんし、予測はかなり難しいです。
私の見解では、短期間のメディア支出予測は業界によって様々だと思います。旅行がとても大きな打撃を受けていることは、悲しいことですが、驚きではありません。アメリカでは、多くの小売事業者が実店舗を閉めないといけない状況になっています。なので、マーケティング費の増加も減少も考えられます。通常なら実店舗のサポートに利用していたマーケティング予算を、オンラインのアクティビティに利用し始めるかもしれません。
ただし、フィンテック業界では、少なくともQuickenのような企業では、製品のQuickenと、新モバイルファースト製品のSimplifiの両方が多くの人にとても役立っている状況なので、少しだけ立ち直りが早いと言えます。今こそ、ユーザーが自分の財政状況のコントロールが必要な時です。しかも、それをするための時間の余裕を持つ人が多くいます。
ただ、近年のどの不況とも大きく異なる状態ですので、半年後や1年後といった未来の状況を把握するのは非常に困難です。
Manav Sethi:これまでとは異なり、モバイルを含めインターネットがこれだけの大規模で利用されているのは初めてです。人類史上初だと思います。
皆さんがおっしゃっていることは、まったくその通りです。ショッピングやビデオなどのカテゴリでは、利用、ダウンロード、マネタイゼーション、収益が増加しています。短期的には、2つの主要なカテゴリ(低価格のエンターテイメントとユーティリティ)では市場で大きな成長傾向が見られると思います。
eコマースには、必需品と呼ばれる新しいカテゴリがあります。これは、在庫の有無だけでなく物流の観点でも、商品の入手に制約がでてきているからです。今のところは、シャンプー、石鹸、基本的な洗剤、食料品、消耗品などを使用できている状態です。この状態はまだ続いており、必需品に対するニーズも継続しているので、短期的には、これらのカテゴリは成長し続けると思います。
長期的に考えたときに、この状態がどれだけ続くかによって予測は変化します。どの不況でもそうですが、人々は内向きになり始めますので、マーケターは、以前は存在しなかった、または多くのリソースを投じていなかったような、新たなセグメンテーションとカテゴリに対応する必要があります。このニューノーマルでは、現金を節約する人が増えて消費者パターンが変化したため、全体の需要も変化しています。消費は通常の状態に戻りますが、おそらく第2四半期、または第3四半期までかかるでしょう。
行動、心理、他者との関わり方、身のまわりの物との関わり方が、このように変化したのは、おそらく初めての経験です。これまでは大規模に存在していなかったような新しいトレンド、新しいパターン、新しいカテゴリが、多く出現することになるので、保守的なアプローチと防御的なアプローチをバランスよく同時にとりながらマーケティングを行っていく必要があります。
(AppsFlyer:Eros International社のアプリが属しているストリーミングエンターテイメントカテゴリの最新のセッション数と収益の傾向 は、以下のグラフでハイライト表示しています)
利用するメディアソース数
AppsFlyer:皆さんが利用しているメディアソースですが、今後、数を増減する予定はありますか? それとも同じメディアソースの利用を継続する予定ですか?
Shay:ほぼ同じだと思いますが、常に新しいメディアソースを探してはいます。現時点では、必ずしも新しいメディアソースを使い始める必要はないと思いますが、拡大を計画しているなら、今は良い(そしておそらく安い)時期と言えます。
当社では、新しいメディアソースを見つけるのに応じてポートフォリオを拡大していますが、最終的には、成長の可能性が高いところに予算を配分することになります。
Stephanie:いつもどおりでしょうか。時代の変化に合わせて進化するために、新しいチャネルをいくつか試しています。この業界の大手企業は、時代の変化には関係なく、規模という点で重要であり続けています。
Manav:チャネルミックスとレイヤーは完全に変化していると思います。たとえば、少なくともインドでは、印刷用紙をまったく入手できません。そして、インドのスマートフォン人口はそれほど大きくありません(13億人に対して3億人を超える程度)。したがって、人々はスクリーン上でPDFを読むことになりますが、スクリーン上の広告に投資したり、集中したり、広告を思い出したりすることはありません。
モバイルに関していえば、メディアソースを変更する予定です。多くの人がWi-Fiのある家で時間を持て余し、ゲームがこれほど大規模にユーザーを獲得するようなことになるとは思いもしませんでした。なので、利用するネットワークを見直し、必要がればネットワークを増やそうと考えています。そして、非効率なパブリッシャーやアプリへの配分も見直したいと考えています。
(AppsFlyer:AppsFlyerパフォーマンスインデックスでは、地域、業種、サブカテゴリのすべてについて、メディアソースの質を評価しています。第10版の全文をご覧になるには、次の画像をクリックしてください)
マーケティング手法
AppsFlyer:マーケティング手法について何か変化はありますか? リターゲティングの増加、ソーシャルやクロスプロモーションなど、より安価な自社チャネルの利用など、あれば教えてください。
Shay:とにかく2020年はリターゲティングの年(英語)になり、容易なクロスプロモーションを提供するメディエーションプラットフォームがますます増えます。2020年はユーザー獲得から少し離れリターゲティングに向けて動く1年になり、現在の状況では、その成長が加速する可能性があります。
すべてのマーケティングチャネルで良いオポチュニティを見つけることができるので、必ずしも何かを押しのける必要はありません。一部の業種にとっては、すべてのマーケティング活動を拡大し、最も効果の高い活動がどれかを評価するのに、今が良いタイミングです。
Stephanie:そうですね。当初設定していた2020年のマーケティング計画と手法を少し変更しました。人々の生活とメディアの利用行動が過去4週間で劇的に変化しています。多くの人が家にいるので動画の視聴が大幅に増えています。こういった消費者行動の変化に合わせていくために、特定のチャネルの利用を続けるのか、あるいは新しいチャネルの利用を開始するかなど、調整をしなければなりません。
AppsFlyer:ユーザー獲得やリエンゲージメントは行っていますか?
Stephanie:両方を少し行っています。 Simplifi by Quickenは1月にリリースされたばかりの新製品ですし、当社はまだ成長段階にいます。したがって、ユーザー獲得に焦点を絞った活動が多くなっています。
Manav:新しい消費者の獲得にかかるコストは、既存の消費者を維持するよりもはるかに高くなるのはご存知のとおりです。したがって、現在はリテンション、ロイヤルティコホート、離脱の可能性の高いコホートにフォーカスを変える必要があります。特にネットワーク上のオーディエンスが縮小している(自動車やラグジュアリー産業において)時には、それが重要になります。
どうやってユーザーを呼び戻したら良いのか。以前よりも見返りを大きくするのか。言うまでもありませんが、このような時にリテンションが主力となるのは当然です。しかし、このような時だからこそ現れるチャンスもあります。
私が言いたいのは、ユーザーの基本的な消費に関するバリューチェーン全体を調べて、どのコホートから最も大きなチャンスを得られるかを知る必要があるということです。
これは主に、eコマースやエンターテイメントなど、消費が停止または大幅に減少した(必需品でない)カテゴリについての話であり、最も安価なエンターテイメントが、モバイルやインターネットで消費され利用が増大しているのは、その良い例です。
さらに、ソーシャルと、ソーシャルプラットフォームが提供する情報拡散ツールの両方で過ごすユーザーの時間が増加していることから、プッシュメディアとしてのソーシャルの利用をブランドは始めました。TikTokのようなプラットフォーム上で教育アプリのブランド認知度を上げるための動画が見られるようになり、Eros Nowでも社会的責任を紹介するビデオが見られるようになりました。
収益
AppsFlyer:アプリまたは一般的な収益についてですが、IAP(アプリ内購入)の減少は見られますか? 減少している場合、それを補うのにIAA(アプリ内広告)が増加すると思いますか?
Shay:結局のところ、ほとんどのIAAは他の広告主から出稿されたものなので、IAAとIAPは非常に密接な関係にあります。誰もが収入が減り支出を減らそうとしている時に、IAAで収益を稼げるチャンスは高くありません。
Manav:SVOD(オンデマンド動画のサブルクリプション)では、有料ユーザーは2桁成長しています。
メディアコスト
AppsFlyer:メディアコストはどうなると思いますか? 全体的に広告費の減少が見られますか? 多くの異なる産業が苦労しています。また、先ほど言及があったように、人々が家にいることで、特にモバイルアプリでのスクリーンタイムの獲得競争が激しくなっています。
短期的、長期的に見て、メディアコストが減少または増加する可能性はありますか?
Shay:現在のメディアコストを短期的に考えた時に、以前よりも低い値になると思います。大幅な下落があれば、わずかに増えることがあるかもしれませんが、大きな増加にはならないと思います。私たちが市場展開を始めれば、コストは大幅に増加するでしょう。しかし、中期的には、以前よりも低い値のままになると思います。
Stephanie: その質問に答えるのは占いをするようなもので、本当に難しいと思います。一部の業界では、物理的にビジネスがなくなっているため、支出を抑える可能性があります。しかし、その一方で、モバイルなどのデジタルに注力し、現在のユーザー行動を把握しようとしている業界もあります。
したがって、最終的にはプラスマイナスゼロの変化になる可能性があります。そして、製品やメディアの種類にもよりますし、その企業が何に対して競争しているかにもよると思います。
Manav:一部のカテゴリでは、短期的にCPI(インストールあたりのコスト)とCPA(アクションあたりのコスト)が微妙に変化すると思います。新車の発売のレビューを行っているポータルまたはアプリと、旅行/OTA(オンライントラベルエージェント)/ホスピタリティのアプリがあり、どちらも成功することが確実だったとします。当然、広告主はオーディエンスがいる場所に広告を出しますが、今の時期には、そのオーディエンスも他に移動してしまいました。
2つ目に、ブランドの観点から、すべてのブランドが支出を続けられるほど贅沢な立場にいるわけではないことを忘れてはいけません。マーケティングのために準備していた予算を見直し、組織の他のさまざまな機能に再分配することを考えています。
3つ目に、中期的には、特に消費量の多い業種では、CPIとCPAが減少しないのであれば、今と同じ状態を維持すると思います。ニューノーマルが定着すれば、また上昇する可能性がります。しかし、歴史が教えてくれているように、同じことが長く続くことはありません。消費者の行動もまた急速に変化することになるでしょう。
最後に、私たち全員が何らかの困難に対処している状態です。こういった場合には、どのような結果になるのかわからないのが常であることを理解してください。なので、どのくらいの期間で、どの程度の影響を及ぼすのかはわかりません。
(AppsFlyer:下の画像は、コストが広告フォーマットによってどう変化するかを示しています)
LTV予測
AppsFlyer:長期的な視点で景気後退による消費者支出への影響を議論するにはまだ少し時期尚早です。しかし、予測モデルを構築する場合、この状況を反映する変更が必要だと思いますか? 皆さんの企業では、予測モデルに変更(英語)を入れる予定はありますか? それとも、現状を維持しますか?
Shay:予測モデルについて1つ言えるのは、モデルのほとんどが履歴データに基づいて構築されていることです。アプリ業界が十分に成熟して以降、不景気は起こっていないと思います。景気後退がLTV(顧客生涯価値)にどのように影響するかを予測するのは難しいですが、アプリだけでなく、すべての人が少し保守的にならざるを得ない状況になると思います。
Stephanie:必ずしも変更する必要はないと思います。特に当社はアプリをリリースしてまだ5か月目ですし、当面のところは、ビジネスのために予測モデルを変更するということはありません。
Manav:エンターテイメントアプリの場合、LTVはプラットフォームでリリースする新しいコンテンツ/番組に依存します。すべての撮影が延期され、新しいコンテンツを提供することが多くの人にとって困難になっていることを考えると、新しいコホートが間違いなく現れると思います。ただし、これは景気回復後に資本と新しいコンテンツがどれだけ準備できるかに大きく依存します。
製品開発
AppsFlyer:今は、新しいタイトルや機能、新しい重要なアップデートをリリースする良いタイミングだと思いますか?
Shay: 間違いなく良いタイミングだと思います。多くのユーザーが自宅にとどまり、ゲームをプレイすることも増えたので、より多くのデータをより速く取得することになります。今、より多くのコンテンツをユーザーに提供することは、間違いなくスマートな行動です。人々は新しいものを探しており、次に夢中になれるものを探しています。
ただし、それを皮肉にとらえてはいけません。今のところ、私はユーザーの苦しみを利用してマネタイズするつもりはありません。信頼の形として、アクティビティといったものをユーザーに提供しています。
AppsFlyer:ローンチのためのユーザー獲得に費用を多く使うのにも良い時だと思いますか?
Shay:支出した以上に利益を得られるので、良い時だと思います。また、ソフトローンチ中はデータがすべてです。新しいゲームが必要とするデータを、今はより安くより速く取得できるでしょう。
Stephanie:製品にとって価値あるもので、エンゲージメントを高めるものであれば、もちろん、そうすべきです。製品の改善や新機能のリリースを止めるべきではありません。しかし、ビジネスモデルを根本的に変えてしまうようであれば、私なら一歩下がってもう少しじっくり考えます。これは、業界と機能のタイプによっても変わると思います。
Manav:もちろん、良い時です。ZOOMはその典型的な例です。セグメントをリードする新しくコホートの出現から目を離さず、新しい機能を追加し続けて、消費とロイヤルティを向上させます。
コロナ関連の機能、アップデート、サービス
AppsFlyer:たとえばキャンペーンの実施やサービスの提供など、コロナウイルスのパンデミックが契機となり、過去数週間に皆さんの企業で実施した革新的なことはありますか?
Stephanie:はい。当社は、新規のお客様について割引を実施しました。これは、物事を整理するお手伝いをしたかったのと、お客様に経済状況をきちんと理解していただくことで安心していただきたかったからです。
AppsFlyer:今、コピーを思い付くのは、おそらくそれほど簡単ではないですが、状況を悪用しているという印象は与えたくないですよね?
Stephanie:もちろんです。通常なら、さまざまな金融サービスにとって、今は忙しい時期です。年の初めに、財政状況をきちんと整える人が多いです。納税シーズンに合わせた調整もありますが、アメリカでは期限が数ヶ月延長されました。
ですから、当社は今の状況を利用したいとは考えていません。人々の移りゆく暮らしを尊重し、それに順応できるすばらしいリーダーシップチームを持つ企業にいることができて、私はとても幸運に思っています。誰も24時間365日の在宅勤務をさせられているわけではありません。
当社としては、この不安定な時期を通してお客様のそばにいて、お客様を支援したいという思いです。
Manav:当社では、3つある戦略ラインのすべてに変更を加えました。
リテンションについては、状況に応じたメッセージングを行うことにより、より頻繁に消費者にアプローチしリエンゲージメントを行っています。この点について当社がすることはまだまだ多くありますが、この活動の成果もあり、指標も健全な値を見せ増加してきています。
クリエイティブについては、以前は、どたばた、滑稽、おかしさ、風刺でアプローチすることができました。現在のアプローチの基本要素は、共感や感情が多くなってきています。そして、新しい番組、新しいプラットフォーム、新しいベースレイヤーの立ち上げの認知度についてのアプローチも増えています。たとえば、プラットフォームに1万本の映画があったとします。以前は、新しい映画のリリースで忙しすぎて、消費者が存在さえ知らない古い映画が多くあることに気づくことができなかったかもしれません。今は、そういった古い映画を発掘し、宣伝する時間があるかもしれません。
ですので、以前からあったコンテンツを再発掘するような予測分析が、これから多く行われるのではないかと思います。
チャネルミックスの点では、当社はデジタルをメインストリームのメディアに据えてきた企業の1つです。そのため、当社のマーケティング費は、常にデジタルに最も多く費やしてきました。そのため、さきほど説明したように、すべてのカテゴリの支出を見直し再分配しました。
最後に、料金プランの観点で話しますと、金額は変えず期間を延長しました。
(AppsFlyer:次の画像は、Eros Nowによるコロナ関連のプロモーションのクリエイティブです)
広告エンゲージメント
AppsFlyer:広告のCTR(クリックスルー率)は通常よりも増加していますか? メッセージングは現在の状況と共鳴できていますか? 現状について、人々はたくさん考えていますか、それとも問題視していますか?
Stephanie:当社のCTRは増加しています。そして、現状については、その両方です。 2〜3週間前、隔離とソーシャルディスタンシングによるニューノーマルに適応せねばならず、多くの人が混乱していました。
数週間がたち、少なくともここアメリカでは、この状態がしばらく続くことを多かれ少なかれ人々は理解していますし、何が明日起こるかを理解するという点で、少し落ち着いてきたように感じています。
最後に
AppsFlyer:5月の計画を今考えているアプリマーケターにむけて、最後にアドバイスをお願いします。
Shay:今は、予算の配分と最適化を柔軟に行う時期だと思います。普段していることを忠実に守ってください。しかし、世界の状態は週ごと数日ごとに変化していることを忘れないでください。新しいことは常に発生します。今は、1か月から2か月の計画を立てるよりも、状況の変化に速く対応できる能力が大切です。
Stephanie:市場で起こっていることを理解することが大切だと思います。私は、常にマーケティングと広告の最新トレンドを把握するように努めてきたので、良好な視点と、それを自分のパフォーマンスになぞらえる方法を得ることができました。
もう1つ重要な点は、自分がしていることに柔軟で俊敏であることです。方針を転換する必要性が、これから数か月の間に何度もあるかもしれないことを理解してください。
Manav:最初に、先ほど述べたように、費用は削減しないでください。費用をスマートに使ってください。チャンスがあるところに、予算を分配してください。
また、以前は存在も出現もしていなかったような新しいセグメントとコホートの形成に目を光らせてください。
たとえば、現在すべてのeコマース企業において、必需品の価格が高騰しています。そして、新しい常識が生まれれば、新しい必需品も出てきます。硫黄を含まないシャンプーが不可欠だという人がいる一方で、通常のシャンプーが手に入らないという人もいます。
両方のコホートには、それぞれの規模があることを忘れてはいけません。ここでいったん立ち戻ってマーケターの観点で考えてみると、「マージンが小さい通常のシャンプーに着目していなかったけれど、現在は、通常のシャンプーが実店舗やスーパーで手に入りにくくなっているので、Amazonのようなネットショッピングでも通常のシャンプーを注文し始める人が出てくるだろう」となります。
以前は、カタログや商品計画で通常のシャンプーを前面に宣伝することはなかったとしても、現在では通常のシャンプーを宣伝すれば、恐らく多くの注文を得ることになるでしょう。
基本的に、顧客の優先順位を再評価し、予算を再分配し、同じスキーム内でのブランドのポジショニングを切り替え、場合によっては新しい製品活動を検討し、そしてもちろん、価値を再定義する必要があります。