iOS 14以降のモバイル不正で知っておきたいこと
AppleがiOS 14をリリースした2021年4月、モバイルマーケティング界全体が再編へと動き出しました。
突如、主要な要素の多くが削除されるか、かなりの制約が課せられることになりました。ユーザーIDへの制限によって計測する時間枠が変わり、さらにはSKAdNetwork(SKAN)(英語)やそのコンバージョン値のメカニズムがiOSのランドスケープを根本から変えてしまったのです。
過去にそれなりの数の変化をくぐり抜けてきた業界でもあり、主要ステークホルダーの大半が迅速に対応し、新しい現実を受け入れていきました。
iOS以外に活路を見いだそうとした一部のマーケターがマーケティング予算を組み替えたため、iOS予算が25%減少した一方で、革新的なアプローチを採用し、業務にテコ入れをしながら新たな現実に対応していこうとするマーケターもあらわれました。
市場関係者の間に起こった計測への懸念を解決するべく、新たな製品やソリューションが市場に導入されましたが、ある重要な問題がまだ解決していません。
iOS 14のリリース以降、iOSの広告不正はどのような状況にあるでしょうか。
この疑問に答えるため、現状を整理してみましょう。
多面的なランドスケープ
iOS 14のリリース以降、SKANと紐づけられるインストールの大半がダイレクトトラフィックをソースとし、トラフィックの圧倒的大多数がセルフレポーティングネットワーク(SRN)やSDKネットワークのいずれかをソースとしています。
SRNトラフィックはGoogleやFacebook(およびその他の)安定した基盤を持つメディアチャネルで構成され、不正発生率は業界平均を大幅に下回り、iOSに至ってはほぼ0%という実績があります。
Protect360はソースを問わず、AppsFlyerのエコシステム全体のあらゆるトラフィックを分析します。SRNもその例外ではありません。当社では、長期間にわたりきわめて低い不正発生率を維持し、前述したメディアパートナーとの連携によりコミュニケーションやデータ統合を高い水準で実現しており、モバイルアトリビューション不正の観点から「安全なトラフィック」を提供する環境を整えています。
SKANで有効な他のソースについては、2種類のメディアパートナーに大別できます。SKANトラフィックの49%を占めるSDKネットワークと、主としてDSP(英語)やアドネットワーク(英語)などの他のメディアソースです。
後者はトラフィック量が比較的少なく、まだ様子見の感がありますが、市場の大手SDKネットワークはSKAN登場後の新たな現実を積極的に受け入れているようです。AppsFlyerと完全に連携したメディア企業はまだそれほど多くはありませんが、彼らのトラフィックはもともと相対的にクリーンであり、不正発生率も平均を大きく下回ります。
メディアパートナーの2大グループは現在SKANランドスケープで支配的な立場にあるため、当社ではAppleの新しいSKAN環境は、現状において「不正がない」とみなしています。上述したデータはメディアミックスが主流となっている現状を反映しており、今後変わっていく可能性が非常に高いため、常に用心を怠らないよう努める必要があります。
ただ、iOSのアクティビティはSKANだけではありません。SKANに(厳密には)依存していないアクティビティも多数あります。下記のグラフが示すとおり、iOSのアクティビティの大多数を占めるのが、実はSKAN以外のアトリビューションです。
そのあたりの理解を深めるため、iOSでのデータ計測指標の内訳を検討していきましょう。
iOSアトリビューション計測のオプション
マーケターが現在利用できるiOSアトリビューションフレームワークは以下の3種類です。
- SKANのみ
SKAN計測に大きく依存するモバイルアプリキャンペーンのアトリビューション。 - MMPのみ
アトリビューションは同意済みユーザー(企業がIDFA(英語)を取得することを許可したユーザー)のIDマッチングか、全ユーザーを対象とした確率論的モデリング(英語)のいずれかを通じて取得できます。 - ハイブリッド
上述した2種類のモデルを組み合わせてアトリビューションを取得します。このシナリオでは、ネットワークはSKANアクティビティであっても、引き続きMMPに(英語)エンゲージメントデータを送信します。
例:特定のユーザーが広告を閲覧した際に、エンゲージメントレポートがパブリッシャーからSKANに送信されると同時に、インプレッションURLがMMPに送信されます。
ハイブリッドモデルを採用した広告主やメディアパートナーは、多数あるAppsFlyerの計測モデルの優れた機能を利用できるほか、Appleのプライバシーに関する要件にも対応できます。ただ、計測の重複による問題も生じています。こうしたトラブルに対処するため、当社は先ごろSingle Source of Truth(SSoT)(英語)というソリューションをリリースしました。AppsFlyer独自の重複防止プロセスにより、AppsFlyerとSKANの両方でインストールのアトリビューションを記録した場合は必ず、1回のアトリビューションにつき1件のレコードとして記録されます。そうすることで、ユーザーのアクティビティが正確で信頼できる唯一の事実となります。
データへのアクセスに制約がある今、モバイル不正を監視するには
iOSキャンペーンの計測でProtect360と確率的アトリビューション(ハイブリッドモデルか、MMPのみのモデルで)を併用するAppsFlyerのお客様は、Protect360不正防止ソリューションもご利用いただけます。
Protect360の不正防止モデルと検出ロジックは現時点でほぼすべての確率的アトリビューションモデルに適用できます。不正防止ロジックはここ数年で劇的な進歩を遂げ、不正な行動パターンを検出する際も、ユーザー識別子に依存することはありません。
Protect360にはベイジアンネットワークなどの高度な検出技術が採用されており、不正防止ロジックで幅広い行動パターンを解析し、個別のIDに影響を受けることなく、検出ロジックを1回の不正発生に適用します。こうした高度な機械学習型解析手法では過去の事象から学習し、精緻なロジックを適用して、将来的に発生するモバイル不正を正確に検出します。
ユーザークラスター行動、バイオメトリック分析、大規模統計といった各種モデルを、確率的アトリビューションモデルと相関関係にある複数の計測手法に適用し、非常に高精度のしきい値を設定して、誤判定の発生を最小限に食い止めます。
AppsFlyerのアトリビューションを活用することで、広告主はエンゲージメントに完全な透明性を確保するとともに、インストールのタイムスタンプデータを得られます。AppsFlyerのアトリビューションは不正検出メカニズムで重要な役割を果たすほか、分析や最適化の精度を高めることで広告主に多大な価値をもたらします。
何より知っておいていただきたいのは、SKANのみを活用する環境ではモバイル不正に対してまったくの無防備ですが、Protect360では、iOSの新しいランドスケープに対応する標準的な不正防止モデルがフルカバーされているということです。以下のような不正対策が挙げられます。
- クリック洪水(英語):クリック洪水の検出に必要なのは、クリックの量とクリックからインストールまでの時間(CTIT)(英語)という2種類の基本的な指標です。クリック洪水は、MMPとハイブリッドアトリビューションで得た網羅的なクリックデータで検出できます。
SKANは現在広告主にエンゲージメントデータ全体を提供していないため、クリック洪水を検出できません。
- クリックインジェクション(英語):クリックインジェクションによる不正は通常、クリックやインストールタイムスタンプ全体で異常を分析して検出します。SKANはアトリビューションタイムスタンプデータをレポートしないため、こうしたシグナルはMMPアトリビューションが関与する場合にのみ利用できます。
- フェイクインストール(偽のインストール):タイムスタンプなど計測可能なポイントをすべて包括的に分析しないと、エミュレーター(英語)、ボット、デバイスファームを経由しアトリビューションサイクル全体を偽装する手口は検出できません。
MMPアトリビューションでは、広告主とProtect360の両方がこのデータをレポートおよび監視できます。
イノベーションを取り入れた不正行為への備え
iOSの新しいランドスケープで不正行為を検出するロジックやモデル、機能が登場するなか、マーケティング関係者はレポート作成で積極的な役割を果たす必要があります。
広告主とメディアパートナーはオープンで透明性の高い関係の構築を目指し、お互いの利益を守り、彼らの環境から不正行為を撲滅させるよう努めるべきでしょう。
SKANキャンペーンを実施するなら、AppsFlyerの確率的アトリビューションを組み込むよう強くおすすめします。そうすることで(Protect360を利用するお客様は)Protect360の不正保護機能だけでなく、AppsFlyerのSSoTやその他の製品が提供する計測機能やインサイトを利用できます。
当社では以前からさまざまなSKAN不正のシナリオを想定し、モバイル不正を技術的に予防する適切なソリューションの実現を目指して議論を重ねてきました。
AppsFlyerのProtect360チームはSSoTなどの革新的なソリューションを投入し、iOSをめぐる開発やエコシステム全般を注視しつつ、プライバシー中心の将来に向けて迅速な対応を進めています。