プライバシー重視の時代におけるリエンゲージメント
Appleがプライバシーを重視してiOS 14以降に行った変更は、業界のエコシステムだけでなく、アトリビューションモデル、キャンペーン最適化、収益化、さらには不正防止技術にも大きな影響を及ぼしました。
この影響は、リエンゲージメントの世界をも覆すことになりました。
またiOSでの計測も根本的に変化しましたが、その一方で、今後は新しいテクノロジーやイノベーションが生じ、絶えず導入されることにより、変化に伴う課題が解決し得るとも言えそうです。
では、私たちは今後どうすべきなのでしょう。 リエンゲージメント戦略を成功に導き、ユーザーとのより有意義なインタラクションを実現するには、どのようなステップを踏めばよいのでしょうか。
この投稿では、プライバシー重視の時代のリエンゲージメントに対応するにはチャネルをどう多様化し、リエンゲージメント戦略をどう改善すべきかを説明し、その後、戦略をさらに強化する5つの方法をご紹介します。
チャネルの多様化
クロスチャネルを活用したアプローチを取り入れるなら、今が絶好の機会です。
Brazeによる近年の調査(英語)によれば、ブランドの中でも製品内と製品外のメッセージチャネルを組み合わせたクロスチャネルを導入しているブランドは、全体的なパフォーマンスが高い傾向にあることがわかっています。
では、「チャネルの多様化」とは具体的にどのようなことなのでしょう。
細かく見ていきましょう。
1. オウンドメディア
オウンドメディア(英語)は作成から配信までを自社で完全にコントロールでき、既存顧客だけでなくしばらく利用をやめていたり、離脱した顧客とも再びつながりを持つための有力な方法です。
ブログ記事からSMS、プッシュ通知、メール、キャンペーン、Webセミナー、ツイートまで、オウンドメディアはアクティブユーザー、アイドルユーザー、退会したユーザーを含むユーザー全体のエンゲージメントを高められるよう、コンテキストを加味した無料のコンテンツを作成できます。プライバシー保護の変更に影響を受けることもありません。
オウンドメディアを取り入れることで、効果的なリエンゲージメントを促進するさまざまなメリットを活用できます。
そのいくつかをご紹介します。
- コンテンツのあらゆる面を自由に設定できる
- リスクが低い – 有料メディアでは、キャンペーンが成功しなかった場合、予算が無駄になります。アーンドメディア(オンラインでの口コミと同義)では、コメントや不正確かもしれない情報をコントロールできません。無料で作成できる – ただし、作成に使用した内部リソースは除きます)
- リスクが低い – 有料メディアでは、キャンペーンが成功しなかった場合、予算が無駄になります。アーンドメディア(オンラインでの口コミと同義)では、コメントや不正確かもしれない情報をコントロールできません。オウンドメディアでは、これらを完全に回避できます。
- コンテキストへの適合 – オウンドメディアでは、アンインストールや利用の休止を含む、ユーザージャーニーの各段階に対応するコンテンツ戦略を構築できます。
アプリをアンインストールしたユーザーには興味を引くメールを通じて再インストールを促し、しばらくアプリから離れているユーザーにはアプリの魅力を思い出してもらえるクリエイティブなプッシュ通知を送信することで、アプリを起動してもらえる可能性が高まります。
プロのヒント
ディープリンクを用いたウェブからアプリへの誘導キャンペーン(英語)を行うことで、ユーザーにアプリの再インストールや再発見を促したり、オーガニックキャンペーンからアプリ内の適切な場所にシームレスに誘導できます。
2. アーンドメディア
アーンドメディアは露出の中でも、その信頼性の高さと潜在的なリーチの大きさから、極めて需要が高く、かつ獲得が難しいメディアです。
ユーザーへのメッセージはオウンドメディアと同じようにはコントロールできないかもしれませんが、こうしたタイプのレコメンドがユーザーへの反響と信頼をもたらす可能性があることは明らかです。
アーンドメディアにはたとえば、個人投稿者によるソーシャルネットワークでの共有、ブロガーやインフルエンサーのレビュー、製品やサービスについて書かれた独立記事などが挙げられます。
アーンドメディアの獲得は簡単ではありませんが、その訴求力をリマーケティングのコンテンツに盛り込めれば、大きな効果が期待できます。
リエンゲージメント戦略の強化
1. ATTポップアップのメッセージの調整
オプトイン率を最適化するために簡単に実行できるステップを、アーリーアダプターの実体験をもとにいくつかご紹介します。
適切なタイミングで表示する
ATTポップアップは、ユーザーとの信頼関係を構築してから表示させます。
たとえば、製品の価値をより良い形で伝える、広告内容と齟齬のない製品を提供するといったことで信頼関係が築けます。
そうすると、アプリの初回起動直後にポップアップを表示するより、オプトインしてもらえる確率が上がります。
目的の文字列をカスタマイズする
ATTダイアログボックスに表示される太字以外のテキスト(目的の文字列)は自由にカスタマイズできるため、ユーザーのIDFAを取得する理由を的確に説明できます。
小さな取り組みではありますが、オーディエンスのオプトイン率、正確な計測、効果的なリエンゲージメントに大きな効果を発揮する可能性があります。
ATTポップアップの前に独自のポップアップを表示する
「ATTのプレポップアップ」、つまり独自のポップアップを表示させてからATTダイアログが表示されるようにします。プレポップアップはアプリに合わせてデザインやタイミング、メッセージの文言を完全にカスタマイズできるため、この後にATTポップアップが表示されることやその目的をユーザーに説明できます。
2. より適切なオーディエンスセグメンテーション
IDFAの取得が制限された今、成長を促進するには戦略的なオーディエンスセグメンテーションが役立ちます。
ここでは、セグメンテーションがIDFA規制後の世界でどう役立つかについて、いくつかのアイデアをご紹介します。
- クロスプロモーション:ユーザーの既知の好みに応じて、アプリを自社の他のアプリ上で宣伝する。
- オウンドチャネルの最大化:カスタマイズしたメッセージをアプリ内メッセージ、プッシュ通知、メール、SMS用に作成する。
- リーチの最適化:すでにキャンペーンに反応したユーザーには、他のオウンドチャネルで同様の広告を表示させないようにする。
- リテンションの向上:利用率の低下など、離脱が近い兆候が見られるユーザーにアプローチする。
- 計測方法の改善:ユーザーセグメントをキャンペーンレベルのパフォーマンスと関連づけて、重要なトレンドの動向を把握する精度を高める。
3. インクリメンタリティへの投資
計測が複雑になると、リエンゲージメントキャンペーンの増分効果を把握し、貴重なマーケティング予算をどこにどのように使うかを理解するためにも、インクリメンタリティがより重要となってきます。
覚えておいてほしいのは、正式なインクリメンタルテストを行うプロセスは、複雑で時間がかかるということです。テストの実行や結果の分析が正確でないことも多いため、ソリューションの一部としてインクリメンタリティを提供しているMMPを選ぶことをおすすめします。
4. 計測インフラのアップデート
上記の説明を踏まえると、今必要なのは、従来の考えを一新し、プライバシーを重視した計測に方向転換することです。
変化を回避する方法を探すのではなく、根本から認識を変える姿勢が求められます。プライバシー重視の未来においては、リマーケティングの計測もまたプライバシー重視であるということです。
計測の柱として、以下をご紹介します。この柱を組み合わせて活用することで、消費者のプライバシーを尊重しながらパフォーマンスを向上するのに役立ちます。
- 代理ユーザーを用いた推定:より粒度の細かいデータが利用できる中間コホートのデータを、マーケターが活用できるようにします。
- たとえば、オウンドメディアのファーストパーティーのデータを利用しながら、学習とパフォーマンスのベンチマークをユーザーベース全体に適用するなどです。
- 予測分析:マーケターが頼れるデータポイントは非常に限られていますが、高い信頼性でデータに基づく意思決定を行えるようにします。
予測はデータに基づいているマーケティングのあらゆる部分で役立ちますが、ATTの導入以降はこれまで以上に欠かせなくなっています。これにより、インストール後の最初の24時間以内のポストバックが大半という限られたデータから、LTV(顧客生涯価値)を予測できます。 ユーザーのLTVを把握できれば、獲得費用をより適切に配分できます。
ターゲットを絞った効果的なリエンゲージメントを行うには、ユーザーの典型的な行動や、収益見込みの高いユーザーと低いユーザーを分ける初期指標を理解することが非常に有効となるのです。
リエンゲージメント戦略を強化する5つの方法
ここからは、リーチ率とエンゲージメント率を最大化するための5つのシンプルな戦略をご紹介します。
1. アプリの離脱ポイントの特定
リマーケティング戦略を成功させるための最初のステップは、ユーザーがどこで、なぜ離脱したのかを理解することです。
UXが期待を下回っていたのか? 広告がアプリの価値を過大評価してのか? バグやパフォーマンスの問題は頻発していなかったか?過度なアプリ内通知でユーザーを煩わせていなかったか?
こうした可能性を検討した後は、離脱したユーザーやエンゲージメントの高いユーザーとの関連性が高いのはどのイベントかを、できるだけ詳細に調査します。
特に関連性の高いイベントが特定できたら、SMSやアプリ内メッセージ、プッシュ通知、メール、ソーシャルメディアメッセージなどの形でトリガーを利用し、報酬や達成のお祝い、特典などでユーザーをアプリに呼び戻します。
2. ソーシャルメディアの活用
ソーシャルメディアを通じてユーザーにアプリの存在を思い出してもらうことだけでも、リエンゲージメントを成功させる最良の方法と言えます。 各ソーシャルメディアで投稿を続け、存在感をアピールするのです。
魅力的なソーシャルコンテンツを作成できればユーザーに真っ先に想起してもらえるようになり、新機能や重要なアップデートがリリースされた際のリエンゲージメントが、より簡単になります。
3. プッシュ通知の洗練
リエンゲージメントのためのコンテンツにユーザーがどう反応するかを、常に念頭に置くようにしましょう。ユーザーは好奇心を刺激されましたか?そのコンテンツに興味を持ちましたか?
エンゲージメント率は業界によって異なりますが、精度の高いターゲティングとタイムリーなプッシュ通知を行えば、40%のエンゲージメント率を達成するのも不可能ではありません。
それにはまず、時間をかけてユーザーを調査することが重要です。しばらくアプリから離れているユーザーはどのような場合に再訪するかを理解し、リエンゲージメントに適切なタイミングとアプローチ方法を洗練させていきましょう。
4. キラーメールの作成
ソーシャルメディア以外で、しばらくアプリから離れているユーザーにアプリを宣伝してリエンゲージメントを促す優れた方法が、メールマーケティングです。
メールマーケティングと言っても、手あたり次第にメッセージを送っても効果はありません。日々大量のメールを受け取るユーザーの目を引くには、文面を最大限パーソナライズしたメールを適切なタイミングで送らなければなりません。メールにも戦略が必要なのです。
5. テストの徹底
キャンペーンを継続的にテストして最適化していくことは、リエンゲージメント戦略に不可欠です。
たとえばゲームアプリでは、一定期間内に実績解除を達成、あるいは一定のレベルに達したものの、その後ゲームを止めてしまったプレイヤーをターゲットにすることが考えられます。
こうしたセグメントを設定した後はクリエイティブをA/Bテストすることにより、メッセージ、CTA、動画コンテンツの適切な組み合わせを検証できます。
重要なポイント
- モバイル業界では今まさに、ユーザーのプライバシーを中心とした劇的な変化が起きています。今日のデジタルマーケティング担当者にとっては、リマーケティングプログラムを計画・実行する前に、まず消費者のプライバシーを考える必要があるということです。
- リエンゲージメントキャンペーンを推進する場合、主な課題は利用できるデータが限られていることです。インクリメンタルなどのソリューションを導入することでリマーケティング戦略の計画、実行、および最適化に役立ち、課題解決の一助となります。
- モバイルアプリの分野は、まだ過渡期にあることを念頭に置いておくことが重要です。 新たなテクノロジーの開発とイノベーションへの注力、これらを絶えず導入していくことで、業界のエコシステムは上記の課題を乗り越えられると思います。