DMP (データマネジメントプラットフォーム)
DMP(データマネジメントプラットフォーム)とは、デジタル広告を目的として顧客データの収集、保存、展開に使用する一元化されたデータベースです。DMPでは、複数のチャネルからデータを蓄積し、ユーザーのデモグラフィック情報、興味関心、オンライン行動などをまとめて全体像を把握できます。
DMP(データマネジメントプラットフォーム)とは?
DMPは、個々の顧客に関するプロファイルを形成し、全体像を分析して、マーケティングキャンペーンでパーソナライゼーションを促進するためのツールです。
多くのマーケターがペルソナ、つまり理想的な架空の顧客プロファイルに基づいてキャンペーンを作成していまが、架空の話や推測に頼ることなく、アプリマーケティングキャンペーンを成功できるとしたらどうでしょう?リアルタイムの行動や興味関心に基づいて、デジタル広告枠の購入を自動化できるとしたらどうでしょう?
DMPを利用すれば、次のことが可能になります。
- ビジネスインテリジェンスと自動化により、データを最大限に活用する
- 顧客の行動や好みに関する貴重なインサイトを得て、広告費を最適化し、データプライバシー規制を遵守する
- 顧客関係管理プラットフォーム、顧客データプラットフォーム、デマンドサイドプラットフォームとの連携により、技術スタックを強化する
データマネジメントプラットフォームがアプリマーケターにとって重要な理由
DMPは、プログラマティック広告(AIや機械学習を使用してメディアバイイングを自動化)にとって不可欠であり、モバイルのユーザー獲得で重要な役割を果たしています。
オーディエンスについて収集したさまざまな情報を考えてみましょう。
DMPを使えば、ファーストパーティ、セカンドパーティ、サードパーティのデータを組み合わせて、全体像をより明確に把握できます。では、データの種類を確認しておきましょう。
- ファーストパーティデータとは、ウェブサイトやアプリなどのソースから直接収集されたデータを指し、通常は企業自身が所有します。
- セカンドパーティデータとは、いったんある当事者によって収集され、契約によって別の当事者に共有されるデータを指します。信頼できるパートナーから共有されるソーシャルメディアのプロフィールやカスタマーレビューなどが含まれます。
- サードパーティデータとは、複数のソースから収集され、サードパーティ組織によって集計、販売されるデータを指します。プログラマティック広告では、特定のオーディエンスのターゲティング、ユーザーの行動のトラッキング、キャンペーンの最適化、結果の計測に使用できます。
一元化されたシステムがなければ、アプリマーケターは複数のデータタイプやソースからインサイトを引き出すことに終始しなければならず、貴重な管理時間を費して、広告を掲載する方法や場所を手動で判断することになります。
DMPがあれば、異なるソースからのデータを一元化し、顧客の行動を統合的に把握できるだけでなく、管理ソフトウェアを使用してデータをアクティブ化し、キャンペーンに役立てることもできます。
データマネジメントプラットフォームの開発
BlueKaiと呼ばれる最初のDMPは、IT起業家のOmar Tawakol氏によって開発されました。Tawakol氏によると、企業は顧客に関する基本的な情報は持っていましたが、買い手の意図という重要な鍵を見逃していました。たとえば、Expediaのような旅行サイトをクリックした場合、旅行を計画する意図があることがわかります。
Tawakol氏のアイデアが形になるまでには時間がかかりましたが、DMPは今やデジタル広告業界には欠かせない存在です。2014年、Oracleが創業わずか6年のBlueKaiを4億2,000万ドルで買収しました。
DMPは、広告掲載に絡む推測や交渉を排除しました。オーディエンスデータのセグメント化、効率的なプレースメントの特定、自動入札による広告インプレッションの売買を可能にし、プログラマティック広告を促進します。
DMPとCDP、DSP、DCR
ここで、DMPとCDP(顧客データプラットフォーム)の違いを説明しておきましょう。CDPは、複数のソースの顧客情報を単一のデータベースに集約します。集約される顧客情報には、個人を特定できる情報と匿名の行動データの両方が含まれます。しかし、CDPは単なるデータベースであり、マーケターがデータを分析したり、何らかのアクションを起こしたりすることはできません。CDPは、CRMやDMPなどデータを必要とするプラットフォームとデータを共有するための橋渡しとして機能します。
データマネジメントプラットフォーム(DMP)は、データの保存だけではなく、顧客の行動に関するインサイトの獲得、キャンペーンの実行、リードの生成といった機能を備えたSaaSプラットフォームです。DMPの主な用途は、セグメンテーション、ターゲティング、パーソナライゼーションです。
DSP、DCRという用語も併せて確認しておきましょう。
- デマンドサイドプラットフォーム(DSP)とは、リアルタイム入札により、広告主が複数のパブリッシャーから広告枠を購入できるプラットフォームを指します。広告主は、オークション形式のマーケットプレイスでインプレッションに入札し、DMPに蓄積されたユーザーデータにもとづいて広告をターゲティングできます。たとえば、Meta広告マネージャは、FacebookやInstagramの広告インベントリを購入できるDSPです。
- データクリーンルーム(DCR)は、データ共有ソリューションの1つで、2つの当事者がファーストパーティデータのセットを安全かつコンプライアンスに則った方法でマージできます。iOSのプライバシーアップデート以降、広告主がファーストパーティデータを取得するハードルは高くなりました。DCRは顧客のプライバシーを守りつつ、ターゲティングのためのより強固なデータプロファイルを構築できるため、急速に人気が高まっています。DCRとDMPは別個のプラットフォームではありますが、補完的な関係にあります。Google、Meta、Amazonはそれぞれ独自のDCRサービスを有しています。
DMPの仕組み
簡単に言うと、DMPはさまざまなチャネルやデバイスからファーストデータ、セカンドデータ、サードパーティデータを収集し、匿名化します。手順を見てみましょう。
- マーケターがDMPを設定し、初期データを投入して基盤を整えます。初期データは次のとおりです。
- オンラインデータ:モバイルアプリ、ウェブサイト、アナリティクスなどから
- オフラインデータ:CRM、購買履歴、メールなどから
- DMPがデータを蓄積、匿名化し、分類します。
- マーケターがデータにタグを追加し、必要に応じてさらに分類します。
- DMPがレポートとオーディエンスのンサイトを提供します。
- DMPが一般的な広告ネットワークやデジタルチャネルと連動し、データをアクティブ化します。
- マーケターは、インサイトにもとづいてキャンペーンを設定し、リアルタイムの顧客データに合わせて実行できます。
DMPでできること
DMPがどのようなものかおわかりいただけたでしょうか。データを活用して広告のエンゲージメントを高める、それがDPMです。
次は、アプリマーケティングの強化に役立つDMPの6つの特長をご紹介します。
1.視聴者をセグメント化
プログラマティック広告がなかった頃、多くのアプリマーケターは大まかなデモグラフィックにもとづいてオーディエンスをセグメント化していました。DMPでは、AIによって拡張された豊富なデータにより、興味関心、行動、ニーズなどにもとづいてオーディエンスをセグメント化できます。オーディエンスを構築、セグメント化したのち、アルゴリズムを用いて類似オーディエンスを見つけることもできます。
2.広告をパーソナライズ
オーディエンスをセグメント化したら、パーソナライズされた広告キャンペーンを実行できます。たとえば、Eコマース企業を考えてみましょう。自社ブランドや現在販売中の商品などの一般的な広告を出すのではなく、DMPで特定のユーザーが興味関心を持ちそうだと判断した特定の商品の広告を出すことができます。
3.デバイスをまたいでリターゲティング
DMPはさまざまなデバイスのデータを統合しているため、パーソナライズされた広告キャンペーンを実行して、デバイスやチャネルを横断してインプレッションを活用できます。DMPをDSPに接続することで、サイトからサイトへ、デスクトップからモバイルへとユーザーを追跡する広告キャンペーンを設定できます。
4.マーケティングROIを向上
DMPには、広告費の最適化に役立つというメリットもあります。顧客の行動や好みに関するデータを分析することで、ターゲットオーディエンスにリーチするために最も効果的なチャネルやメッセージを判断できます。これによって、広告予算を効果的に配分し、より良い成果を達成できます。
5.オーディエンスインサイトを獲得
広告キャンペーンから購入までをトラッキングできるため、遡及的に情報経路をたどり、実際に製品やサービスを購入したユーザーについてのインサイトを得ることもできます。高度な分析で市場調査をまとめ、顧客の主要なデモグラフィック属性や行動属性を共有できます。
6.コンプライアンスを遵守
DMPの最も重要なメリットは、データプライバシー規制の遵守に役立つことです。一般データ保護規則(GDPR)やその他の個人情報保護法が施行され、企業は顧客データの収集や共有方法に注意を払う必要があります。GDPRの下でEU市民のデータを誤って扱った場合の罰金は、最低でも1,000万ユーロ、または企業の収益の2%です。DMPにより、企業は法律の範囲内にとどまり、高額な罰金を回避し、評判を守ることができます。
データマネジメントプラットフォームとマーケティング技術スタック
DMPは、アプリマーケターの技術スタックの1つに過ぎません。ビジネスに合わせて技術スタックを構築するのは手間がかかります。ベンダーを選び、連携先として複数のプラットフォームを探す必要もあるかもしれません。マーテックの選択肢の多さは、まさに圧倒的です。プラットフォームの数はこの10年(2012~2022年)で約10倍になり、現在はマーケティングオートメーション、分析、アトリビューションなどに対応しています。
DMPは必要か?
DMPはどんな企業に適しているのでしょうか。DMPを構築、運用できる専門のマーケティングチームがないスタートアップ企業には不要かもしれません。デジタルマーケティングエージェンシーにDMPの管理を任せるという選択肢もあります。小規模なスタートアップ企業の場合、まずは無料の製品分析ツールを導入して基本的な分析からスタートし、その後スケーラブルな成長に備えて、より堅牢な有料の製品スイートに移行するというケースが一般的です。
マーケティングチームが確立している中堅、大企業は、DMPを導入し、モバイル広告キャンペーンを自動化、最適化すべきです。アプリマーケターが製品ライフサイクルの各段階で活用すべきツールの種類を見ていきましょう。
テスト期
- アプリ計測に向けた製品分析
導入期
- アトリビューションプロバイダーと連携し、計測とマーケティングオートメーションにより広告オーケストレーションを実現
成長期
- メディアパートナーとロケーションサービスで広告オーケストレーションを促進
- スタックコネクターとしてのCDP
成熟期
- 計測のためにクラウドストレージを導入し、データを可視化
- スタックコネクターとしてのDMPおよびマーケティングクラウドプラットフォーム
ユーザー獲得のためのマーテック基盤を構築
DMPはスタックコネクターとして機能し、アプリの成長をサポートして、製品を成熟へと導きます。DMPを効果的に利用するには、いくつかの基盤が必要です。
- リードと顧客情報を格納するCRMプラットフォーム
- 一元化されたデータベースでデータを整理、蓄積するCDP
- 広告インベントリを購入するDSP
さらに、国際的な規制に準拠したクリーンなデータ運用を維持するために、ファーストパーティデータを収集、保存、分類するベストプラクティスを設定する必要があります。
データインテリジェンスでさらに先へ
アプリマーケティング戦略を成熟させるには、さらに一歩踏み込む必要があります。アトリビューションは、結果を計測し、アプリのダウンロードにつながったマーケティングチャネルを把握するための優れたデータインテリジェンスです。モバイルアトリビューションは、各アプリインストールとアプリエンゲージメントを文書化し、参照元のマーケティングまたはメディアソースに紐付けプロセスです。
最後に、アプリ内分析を計測することで、マーケティング施策を一巡させることができます。無料でインストールできるアプリのエコシステムでは、インストールが収益に結びつかないことがあります。リテンションとアプリ内エンゲージメントを計測するツールが必要です。デバイスやプラットフォームを横断してキャンペーン分析を計測できる、AppsFlyerなどのモバイル計測パートナー(MMP)を見つけましょう。
重要なポイント
- DMPは、ファーストデータ、セカンドデータ、サードパーティデータを蓄積、分類する一元化されたデータベースで、データをアクティブ化するためのインターフェイスを提供します。
- DMPは、CDP、DSP、DCRとは異なりますが、マーケターの技術エコシステムにおいて、これらのマーテクツールを補完するものです。
- DMPはプログラマティック広告の重要な要素であり、オーディエンスのセグメント化、類似オーディエンスの特定、自動入札によるパーソナライズされた広告の展開に役立ちます。
- DMPは、スタートアップ企業には必要ないかもしれませんが、アプリマーケターが製品を成熟させるための技術スタックには不可欠な要素です。
- DMPを使い始める前に、CRMプラットフォーム、顧客データプラットフォーム、データクリーンルームなどの基盤を整える必要があります。
- DMPを利用することで、マーケターは広告購入を自動化し、ROIの向上と継続的な成長を実現できます。また、高度な分析とインテリジェンスでキャンペーンの成功を計測できます。