SVOD(サブスクリプションビデオオンデマンド)
SVODは動画によるマネタイズモデルであり、加入者はわずかな定期料金を支払うことで、オンデマンド動画コンテンツに無制限にアクセスできます。このモデルは、Netflix、Disney+、Amazon Primeなどのプラットフォームで採用されています。
SVODとは
SVODとはサブスクリプションビデオオンデマンドの略。SVODはOTT動画による人気のマネタイズモデルであり、加入者は定額料金を支払うことで、膨大なビデオコンテンツのライブラリに広告なしで無制限にアクセスできます。つまりSVODは、ビデオコンテンツを対象としたSaaSサブスクリプションのようなものだといえます。
サブスクリプション料金は任意の間隔で課金できますが、多くの場合は月払いか年払いとなります。ユーザーは一度料金を支払えば、その期間中は好きなだけコンテンツを見ることができます。
主なOTTプラットフォームとしては、上記のプラットフォーム以外にも、HBO Max、Hulu、Paramount Plus、Showtime、Apple TV+、ESPN+、Peacockなどがあります。 このタイプのモデルは、サブスクリプション料金が定期的に課金される(すなわち収益が予測可能であり、結果としてより高いLTV(顧客生涯価値)をもたらすことから、ストリーミング業界で非常に幅広く普及しています。
OTT業界において、マネタイズモデルとしてのSVODの利用がどれほど広まっているかは、すでに全世界で18億8000万人以上(インターネットユーザーの43.2%)がサブスクリプション制のOTT動画サービスを利用しているという事実からも推測することができ、これは今後いっそうの増加が見込まれています。
SVODが利用されているのは、上記のようなエンターテインメントプラットフォームだけではありません。
他のジャンルでも、SVODモデルで運営されているプラットフォームは多く、例として以下のようなものがあります。
- eLearning
- eスポーツ(ゲーム)
- スポーツ
- フィットネス、ヘルス、ウェルネス
SVODプラットフォームは非常に人気が高いため、最近では次のような質問も提起され出しています。
SVODはケーブルテレビに取って代われるか
今年にはアメリカ人の3人に1人がケーブルテレビを解約する可能性があり、ケーブルテレビの全体的な普及率は2010年の88%から71%にまで低下しています。
この現象は今や世界中で加速しつつあり、その理由としては以下のようなものが挙げられます。
- SVODプラットフォームで優れたコンテンツを視聴できること
- サブスクリプションプランの料金の手頃さ
- 超高速インターネットの登場
- スマートテレビやスマートフォンの普及
この現象に拍車をかけているのが、SVODアプリによって実現されるアクセスのしやすさであり、加入者は外出先でも好きなコンテンツを見ることができます。
webOS(LG TV)やTizen OS(Samsung)のような主要なスマートテレビ用OSにも、多くのSVOD OTTアプリがプリインストールされており、オプションでさらに追加のアプリもダウンロードできるため、視聴者はそうしたアプリにスマートテレビで簡単にアクセスできるようになっています。
米国では今や、全世帯の85%近くが少なくとも1つのSVODサービスにアクセスしているというのも驚くべきことではなく、これはケーブルテレビの普及率をはるかに上回る数字となっています。
SVODの契約数は猛烈なスピードで増え続けており、ケーブルテレビの普及率は一貫して低下しているため、今やSVODがケーブルテレビの市場シェアを奪いつつあると言ってよいでしょう。とはいえケーブルテレビは依然として、動画やテレビのコンテンツ視聴に関する支配的なレガシーオプションとしてかなりの市場シェアを占めているため、近い将来SVODに完全に取って代わられるということはないかもしれません。
SVODプラットフォーム
もっとも人気の高いビデオストリーミングOTTプラットフォームのいくつかは、SVODモデルを利用してオンデマンドコンテンツを収益化しています。国際的なストリーミングガイドサービスであるJustWatchでは、100か国以上におけるSVODサービスへの関心度を計測しています。JustWatchによる、2022年第2四半期の米国におけるストリーミングサービスのパフォーマンスレビューは次のとおりです。
- Netflix:米国のSVODサービスの中では、Netflixが依然としてもっとも人気の高いSVODプラットフォームとなっており、国内シェアの21%を占めています。1997年に設立されたこの定額制ストリーミングサービス/制作の大手企業は、優れたオリジナルコンテンツと厳選コンテンツを組み合わせて、自社プラットフォーム上で提供しています。
- プライムビデオ:Amazonが提供するこのストリーミングプラットフォームは、米国で20%の市場シェアを持ち、厳選コンテンツとオリジナルコンテンツの興味深いコレクションを提供しています。
- Disney+:ディズニーが制作した映画や番組をすべて視聴できるこのプラットフォームは、米国内で14%の市場シェアを確保しています。
- Hulu:米国市場で10%のシェアを持つこのプラットフォームは、テレビ番組や映画のほか、ライブテレビなどのコンテンツも提供しています。
今後の見通しを検討するため、SVODの新規加入者数を見てみると、アマゾンプライムがトップとなっており、Disney+とApple TV+がそれに続いています。
SVODの利点と欠点
SVODの利点
1 – 予測可能な継続的収益
サブスクリプション収益は月単位または年単位で継続的に確保されるため、OTTプラットフォームを運営し拡大させていくための収益を確実に得ることができます。
2 – 料金の管理
SVODモデルでは、料金設定に関する制限はありません。さまざまな価格帯やデバイス専用プランを用意したり、コンテンツを配信する場所によって異なるプランを提供したりすることもできます。
つまり、収益は独自にコントロールできるため、ユーザーあたりの平均収益や解約率に応じて微調整することも可能です。
3 – ブランドロイヤリティ
主要なユーザーグループに響くコンテンツや、そのプラットフォームでしか視聴できないコンテンツを、制作したり厳選したりして提供すれば、多くの場合ロイヤリティの高い加入者の確保につながり、その加入者が他の人にもサービスを勧めてくれるようになります。
つまり、長期にわたって継続的な収益を得られるうえ、ユーザーベースの拡大も(コストを払うことなく)期待できるということです。
SVODの欠点
1 – ユーザー数が比較的少ない可能性
ユーザーによっては、定期的に料金を前払いするよりも、広告が出る代わりに無料でコンテンツを視聴できるシステム(AVODなど)のほうを好む場合があり、そういったユーザーは獲得できない可能性があります。
2 – 競争の激しさ
SVOD市場はきわめて競争が激しくなっています。つまり、料金設定は賢く行う必要があり(ユーザーは複数のサブスクリプション契約を結びたがらない場合があるため)、また同時に、ユーザーが好むようなフレッシュで質の高いコンテンツの提供に投資することも不可欠になります。最終的にはその両方が、収益に大きな影響を与える可能性があるからです。
3 – 新規ユーザーの獲得にかかるコストの高さ
ブランドロイヤリティや口コミの効果は限定的です。エコシステムの競争の激しさや、広告付き動画という選択肢の存在をふまえると、ユーザーは別のストリーミングサービスに乗り換えたり、追加のストリーミングサービスに料金を払ったりすることにあまり積極的とは思われず、新規ユーザーを獲得するためのコストはかなり高くつく可能性があります。
SVOD/AVOD/TVOD
SVODはOTTプラットフォームの主なマネタイズモデルの1つであり、その他にはAVODとTVOD(トランザクションビデオオンデマンド)があります。
では、AVODとTVODがSVODとどのように異なるのかを見てみましょう。
AVOD(アドバータイジングビデオオンデマンド)
このマネタイズモデルは、広告主からの支払いによって機能します。ユーザーは特定の動画の開始前や途中に広告を見るという「代償」を払うことで、見たいコンテンツを無料で視聴することができます。
AVODモデルを採用しているプラットフォームは、幅広い視聴者層にアピールしており、もっとも多くのユーザーを抱えています(なんといっても無料なので)。例としては、YouTube、Xumo、Crackleなどが挙げられます。
TVOD(トランザクショナルビデオオンデマンド)
トランザクションビデオオンデマンド(TVOD)では、AVODと同様、ユーザーは無料でプラットフォームに登録できますが、コンテンツをレンタルまたは購入するには1回ごとに料金を払う必要があります。
レンタル動画については、視聴可能な期間や回数上限が設定されている場合がありますが、購入した動画については通常、永久的なアクセス権が与えられます。この手法は通常、最新の映画リリースなどのプレミアムコンテンツについて採用されます。このモデルを利用しているプラットフォームの例としては、AppleのiTunesが挙げられます。
SVODのモデルは自社に適しているか
SVODプラットフォームの立ち上げに関心がある場合は、まずそれが自社のビジネスに適しているかどうかを検討してみましょう。
SVODが適しているケース:
- 特定の視聴者グループにアピールできるような、豊富なまたはニッチなコンテンツライブラリーがある
- 定期的にオリジナルコンテンツを作成してコンテンツライブラリーを更新するための資金(および意欲)がある
- 新規加入者の獲得(およびその維持)のためのキャンペーンに費用をかけることができる
- 柔軟なサブスクリプションプランの導入に前向きである
- 継続的な収入源を求めている
- 複雑なサブスクリプションビジネスの指標を追跡することに抵抗がない
- 自社のユーザーは、コンテンツにアクセスするため定期的にサブスクリプション料金を支払う意志があると思われる
SVODを導入するには
上記の条件がすべて満たされているなら、プラットフォームでSVODを導入して問題ありません。開始する場合は、以下の手順に従ってください。
- 自社のニッチ分野と、ターゲットオーディエンスを選択します。それによって、プラットフォームにどのようなコンテンツを追加すべきかが決まります(例:エンターテインメント、フィットネス、スポーツなど)。
- ビデオAPI、セキュリティ、クラウドCDNなどを備えた動画ホスティングプラットフォームを選択します。モバイルアプリやスマートテレビアプリの開発が可能かどうかもチェックしておきます。
- 1つのCDNがダウンした場合も常に安定したコンテンツ配信を行えるよう、マルチCDNアーキテクチャを活用します。
- プラットフォームに追加する魅力的なコンテンツの収集や作成を開始します。
- 選択したプラットフォーム上に、サブスクリプションウェブサイトおよびアプリを構築します。
- ネットワーク速度に関係なく良好な視聴体験を提供できるよう、動画をアダプティブビットレートストリーミング用にエンコードします。
- DRM(デジタル著作権管理)技術によって動画を保護し、著作権侵害を防止します。
- 料金プランと、各プランで可能なアクセスのレベルを決定します。
- 訪問者にはプラットフォームに登録してからコンテンツにアクセスしてもらうよう、動画にペイウォールを設定します。
- SVODプラットフォームの売り込みを行って、加入者を獲得します。
重要なポイント
- SVODとは、NetflixやDisney+などのプラットフォームで採用されている、 動画のオンデマンド配信によるマネタイズ手法であり、特定期間についての定額料金と引き換えに、視聴者にコンテンツへのアクセスを提供するものです。AVOD(広告により収益化)や、TVOD(コンテンツのレンタル・購入の定額料金により収益化)とは異なります。
- この手法では継続的な収益が得られるほか、料金のコントロールがしやすく、加入者のロイヤリティも高めることができますが、一方で無料のAVODプラットフォームに顧客を奪われる可能性があります。
- SVODを検討すべきなのは、ニッチなコンテンツの豊富なライブラリーがあり、加入者を獲得・維持するためにコストをかけることができ、柔軟な料金プランにも対応可能な場合に限られます。