ARPU (Average revenue per user)
ARPUとして知られるユーザー(またはユニット)あたりの平均収益は、一定期間内に1人の顧客がもたらす平均売上金額を把握するのに役立つ指標です。ARPUは企業の種類にかかわらず用いることができます。
ARPU (Average revenue per user)とは
主にARPUと呼ばれるこの指標は、具体的には、特定の期間のビジネスの総収益を、その期間の平均ユーザー数で割って算出される比率です。
注:モバイルアプリの用語では、上記の「ユーザー」は大抵 「アクティブユーザー」 を意味します。
ARPUが重要な理由
ある一定期間におけるユーザーあたりの平均売上金額を表すARPUは、あらゆるビジネスにとって最も重要な指標の1つであり、マーケター、製品マネージャー、経営幹部にとって重要な情報です。
マーケターは最も価値の低いユーザーと最も価値の高いユーザーのARPUを知ることで、順調なキャンペーンとそうでないキャンペーンを把握し、それに応じてマーケティング活動を最適化できます。ARPUを重視した計測をすることで、利用中のチャネルやネットワーク、実施中のキャンペーンなどを再検討し、ROIをもとに継続するか中止するかを判断できます。
モバイルユーザー獲得という点では、ARPUはCPI(Cost per install / インストールあたりのコスト)やCPA (Cost per action / アクションあたりのコスト)といった、メディア指標のコストも補完しています。これらを比較することで、マーケティングの純利益、すなわちROAS (広告費用対効果)を決定し、マーケティング費用を効果的に使えているかがわかります。
ARPU の計算方法
最もシンプルな形のARPUは、上述したように非常に単純な計算です。つまり、特定の期間に発生した収益と、その期間のユーザー数との比率です。
適切な期間はビジネスによって、まったく異なります。
では、NetflixやSpotifyなどのような、月額サブスクリプションモデルのビジネスを例に説明します。
月次のARPUは、前月に発生した収益を、その期間のユーザー数で割って算出します。
たとえば、あるビジネスが6月1日から30日までに1万ドルの収益を生んだとします。
この期間に少なくとも1回はブランドに携わったユーザーが 5,000人いたとして計算します。
1万を5,000で割ると、ARPUは2ドルになります。
旅行業界やEコマース業界のようなビジネスでは、ユーザーが定期的にではなく必要なときにだけ散発的に製品を購入する傾向があるため、四半期を期間に設定することもあります。
総収益には、新規ユーザー、既存ユーザー、アップセル、クロスセルの収益が含まれることに注意してください。
モバイル用 ARPU
競争の激しいモバイルエコシステムでは大半のアプリが無料でダウンロードできるため、アプリ所有者はアプリ内イベントに収益を大きく依存しています。
アプリ内イベントの収益は、以下の4つのいずれかで発生します。
- アプリ内広告(IAA)
- アプリ内購入(IAP)
- サブスクリプション
- 有料アプリ
アプリがサブスクリプションベースの場合にARPUを用いると、顧客から最も良い反応を得られる価格モデルがどれかという理解も深まります。特定のコホートにとって魅力的な、特定のバンドルがあるかもしれません。ARPUを計測することで、そのバンドルを認識する助けになります。
無料アプリの場合、収益の大部分を占めているのはIAPですが、アプリ内広告枠の価値を理解するアプリ所有者も増えているため、IAAも次第に収益に貢献するようになっています。
より粒度の細かい情報を得るには、収益源を分けて計算するのも有効です。これにより、5月の全アクティブユーザーから発生した広告収益と同期間の購入収益を把握し、それぞれを比較できます。
たとえば、総収益が1万ドルで、3,000ドルが広告によるものだとわかれば、残りの7,000ドルはアプリ内購入によるものだと簡単に推測できます。この場合、広告費が3,000ドル未満であれば、ROASはプラスになります。
2つの収益源を分けることで、どちらがより良い結果をもたらしているかを把握できます。
高度なARPU計測:コホートARPU
上記の計算は、アクティビティベースのARPU(特定の期間に全ユーザーからもたらされた収益)と言えます。しかし、別の方法でARPUを計算することもできます。それはコホートにもとづく計算で、モバイルマーケターにとっては特に有用です。
コホートとは、インストール日、地域、デバイスの種類など、似た特性を持つユーザーのグループを意味します。
コホートベースのAPRUを算出する計算式は以下の通りです。
期間Yに獲得したユーザーが、期間Xにもたらした総収益/期間Yに獲得したユーザーの総数
コホートベースのARPUは、ある特定の期間内に、新規ユーザーによってもたらされた収益を意味します。これはROIやモバイルユーザー獲得(UA)の取り組みが順調かどうかを判断するのに非常に役立ちます。
たとえば、5月に獲得した全ユーザーを対象に、そこから30日以内に発生したユーザーあたりの平均収益(30日間のARPU)を計測できます。
このシナリオでは、ユーザーが5月30日に初めてアプリをインストール、またはウェブサイトにアクセスした場合でも、以降の30日間(6月)に発生した収益は、5月のコホートベースのARPUにカウントされるということが重要です。
コホート指標はマーケターにとって重要なツールであるため、業界標準ではアクティビティベースのARPUとコホートベースのARPUは区別しません。しかし、これらの区別は重要だというのがAppsFlyerの考えです。
注:ARPUとARPPU (Average revenue per paying user / 有料ユーザーあたりの平均収益)を混同しないように注意しましょう。ARPPUは、有料ユーザーがある期間にもたらす平均収益金を意味します。
ARPUとLTVの違い
ARPUとLTV(顧客生涯価値)は非常によく似た指標のため、わずかな違いはあるものの、ときに同じ意味合いで使われます。しかし、これらを同じものとして用いるべきではありません。
その違いは期間にあります。
ARPUの場合、明確な開始日と終了日(インストール後、サブスクリプション契約後、または購入後30日、60日、90日など)があらかじめ設定された、任意の期間が対象です。一方、LTV(顧客生涯価値)の対象期間には、ユーザーの全期間(ブランドとの最初のインタラクションから1日か300日にかかわらず、離脱直前まで)が含まれます。
これらが混同されやすいのは、期間が同じ場合があるためです。たとえば5月のARPUを計測している最中、同じ5月の間にあるユーザーが購入して離脱したとします。この場合、LTVを計測しても同じ結果となります。
とはいえ、LTVの計測には、いくつか付加的なメリットがあるのは確かです。
LTVはたとえば、そのユーザーが離脱前に企業にもたらした価値や、企業がその顧客をどれだけ定着させられたかを計測できます。
また、ROASを最適化し、ユーザーあたりの収益がユーザーあたりのコストを上回る(つまり、利益が発生している)という理想の状態を実現するにも、LTVは重要な指標です。
ARPU を改善する方法
ARPUを向上させるには、さまざまな方法があります。その主な方法は、下記のとおりです。
1. 料金プランを調整する
サブスクリプションベースのサービスを提供している場合、料金プランの調整によってARPUが向上する場合があります。
たとえば、よりプレミアムなプランを契約してもらうための機能を追加したり、年間料金を前払いする場合は月額料金を割り引くなどの調整が挙げられます。
2. ユーザー獲得キャンペーンを最適化する
ユーザー獲得の取り組みにもとづくARPUを計測することで、価値の高いユーザーを獲得しているチャネル、クリエイティブ、キャンペーンを明確にできます。モバイルの場合は、さまざまなアドネットワークの価値を評価することもできます。
いったんビジネスのトレンドを特定できれば、そこに投資を倍増し、ARPUをより向上させることが期待できます。同様に、あるキャンペーンやチャネルによるARPUが低いとわかれば、それらを中止し、他のキャンペーンやチャネルにリソースを集中させられます。
3. リテンションに焦点を当てる
最も価値のあるユーザーに重点を置き、そのユーザーを維持できるように努めます。よく知られているとおり、リテンションは獲得よりもはるかにコストを抑えられます。
ユーザーの離脱傾向がないかを分析し、その時点でリマーケティングキャンペーンを開始することで、ユーザーの関心を維持できます。
ユーザーを維持する効果的な方法の 1 つは、ロイヤリティプランです。たとえば、Eコマースビジネスの場合は定期的な特別オファーや割引、ゲームアプリの場合はユーザーがアプリを連続して起動した日に、つど無料のアイテムを提供することなどが挙げられます。
重要なポイント
ARPUは、収益を生む活動がどの程度順調かを全体的に把握できるため、マーケティングにおいて最も信頼されている指標の1つです。
以下についても覚えておきましょう。
- ARPUは、有料ユーザーに対する収益の比率です。企業がどの程度収益を上げているかを示し、どのチャネルが価値のある顧客を獲得しているかを評価するための重要な指標です。
- ARPUは、特定の期間における有料ユーザーの収益を算出するARPPUとは異なります。
- ARPUとLTVは同じ意味合いで用いることもできますが、主に測定期間に関するいくつかの違いがあります。
- ARPUはアクティビティベースのARPUと、より高度な分析を行うコホートベースのARPUとに分けられます。後者はユーザー獲得の取り組みが成功しているかを測るのに役立ちます。
- ARPUを向上させるには、価値の高いユーザーをビジネスにもたらすための料金プランの調整、アクティブユーザーの維持、およびユーザー獲得キャンペーンの最適化といった方法が挙げられます。