OTT (Over-the-top / オーバーザトップ)
OTT(オーバーザトップ)とは、従来のテレビ放送やケーブルテレビではなく、オンラインでデジタルコンテンツを配信するサービスです。
OTTとは、従来のメディア消費形態、特にかつて普及したケーブルテレビやセットトップボックスを介さずにコンテンツを配信するサービスを指します。
『ゲーム・オブ・スローンズ』や『THE LAST OF US』をはじめとるすOTTコンテンツは、すでに一般家庭に浸透しているといっていいでしょう。Statistaによると、2023年のOTT動画の売上は3,161億ドルに達するとみられ、年間成長率は10%になるとしています。ユーザー数は、2027年までに42億1,630万人にのぼると推定されています。
この動画コンテンツの黄金時代は、広告主にとって絶好のチャンスです。この記事では、OTTの収益性が高い理由と、さまざまな(そして進化する)収益化オプションについて紹介します。
OTTとは?
OTTとは、既存のケーブル回線をオーバーザトップで(飛び越えて)配信されるメディアのことです。
OTTでは、専用アプリやウェブサイトを通じて、テレビ、デスクトップ、モバイル、ゲーム機、タブレットデバイスでコンテンツをストリーミング配信します。消費者は、従来の放送業者を利用することなく好きな番組にアクセスできます。
OTTの特徴
- 視聴方法を選べる:従来のメディアが専用のセットトップボックスや電波を必要とするのに対し、OTTではノートパソコン、タブレット、スマートフォン、スマートテレビなどでメディアを配信します。
- 時間を選べる:従来のメディアでは番組表に沿って放送されるリニア型なのに対し、OTTコンテンツはいつでも好きなときに好きな順番でストリーミング再生できます。
- チャンネルも選べる:選択肢が多すぎて困っているなら、デジタルコンテンツプロバイダーが提供する無料広告付きストリーミングテレビ(FAST)を選ぶのも手です。従来のリニア放送のように番組表に沿って配信されます。従来メディアとの違いは、プログラマティック広告を通じて収益化されることで、そのためFASTはコネクテッドTVの一種とされます。
- コンテンツを選べる:従来のサービスプロバイダーにはプログラムマネージャーがいて、綿密なリサーチに基づいて放送する番組、映画、楽曲を決めていました。OTTでは、メディア企業のアプリやウェブサイトから、自分の好みに合ったコンテンツを再生できます。
また、メディア企業やマーケターは、番組や広告にエンゲージしたユーザーから直接的なフィードバックを大量に得ることができ、それがコンテンツ制作や広告戦略の指針となります。
OTTにはメリットばかり
OTTはメディアの消費者と制作者の間の力学を一変させました。従来のメディアモデルでは、放送ネットワーク、ラジオ局、ケーブルテレビプロバイダーなどの放送業者がコンテンツをひとまとめにし、番組表を組んで放送していました。一方、OTTは放送業者を介さないため、消費者は制作者のアプリやウェブサイトにログインし、好きなコンテンツを選んで、楽しむことができます。
中間業者を挟まないため、制作者やマーケターはオーディエンスと直接つながることができます。これは大きなチャンスであり、体験をパーソナライズして、オーディエンスが求めているものに合致したコンテンツを提供できます。
OTT収益化モデル
OTTは効果的な収益モデルなしには成り立ちません。ここでは、パブリッシャーが収益を上げるための6つの方法を紹介します。
1.サブスクリプションビデオオンデマンド(SVOD)
SVODモデルでは、月額のサブスクリプション制になっているものが多く、ユーザーは毎月定額を支払いコンテンツを好きなだけ視聴できます。Apple TV+、Amazonプライムビデオ、HBO Max、Disney+、SkyはすべてSVODモデルを採用しています。音楽ストリーミング配信のSpotify、Apple Music、Tidalも同じアプローチです。
2.アドバタイジングベースドビデオオンデマンド(AVOD)
AVODでは、フリーミアムまたは割引価格でサービスを提供し、収益の大半を広告から得ています。DailyMotion、Pluto TV、YouTube、4OD、Crackle、Spotify、TubiはAVODモデルを採用しています。
ブロードキャストビデオオンデマンド(BVOD)もAVODの一種です。従来型のパブリッシャーが提供する広告付きのストリーミングサービスで、NBCユニバーサルによるPeacockなどが挙げられます。
3.トランザクションビデオオンデマンド(TVOD)
TVODは、いわゆるペイパービューモデルです。消費者は、視聴するコンテンツ(動画や楽曲)ごとに料金を支払います。TVODは、スポーツイベント、新作映画、独占コンテンツなどで特に効果的です。
4.無料広告付きテレビ(FAST)
前述したように、FASTは無料のリニア型配信がメインです。Plutoや Samsung TV Plusなどのサービスは広告費によって運営され、従来のテレビと同じように番組表に沿って配信されます。
5.プレミアムビデオオンデマンド(PVOD)
PVODの収益モデルでは、コンテンツパブリッシャーは動画コンテンツの早期かつ独占配信に対して、プレミアム料金を課しています。TVODとの違いは、ただプレミアム料金が追加されるかどうかです。Disney+で公開された映画『ムーラン』を例に挙げると、公開後3か月は視聴に30ドルの追加料金が必要でした。4か月目以降は、加入者であれば追加料金なしで視聴できるようになりました。
6.ハイブリッド
OTT分野が成長するなか、プロバイダーはさまざま収益モデルを模索しています。NetflixやHuluは、完全有料会員制としたうえで広告付きサービスを提供しています。一方、Amazonは月額料金制をベースに、独占コンテンツには追加料金を課しています。
このように、OTTの収益モデルは、消費パターンの変化に合わせて柔軟に変えていくことができます。
広告フォーマット
OTT広告のメリットの1つは、広告主が幅広い広告フォーマットを利用できることです。従来のテレビ放送とは異なり、OTT広告は視聴されるコンテンツやターゲットオーディエンスに合わせて配信方法を変えることができます。
プレロール広告:動画本編が始まる前に表示される短い広告です。
ミッドロール広告:動画本編の途中で表示される広告で、ユーザー体験を損ねないように自然な切れ目に挿入されます。
ポストロール広告:動画本編が終わった後に表示される広告です。
ピクチャーインピクチャー広告:動画本編の再生中に画面の隅に表示される動画広告です。
インタラクティブ広告:リンク、アンケート、ゲームなどを通じて視聴者に参加を求める広告です。
コンパニオンバナー広告:動画本編の横に表示されるバナー広告です。
アウトストリーム動画広告:記事、フィード、バナーなど、動画本編の枠外に表示される動画広告です。
OTT広告のメリット
収益を上げるには注目を集めることが重要で、その注目は今、デジタルコンテンツに集まっています。OTT広告はまだ新しいチャネルだと思われていますが、非常に効果的な広告形態となったのにはいくつかの理由があります。
精密なターゲティング
OTT広告は、1人のユーザーが1つのコンテンツをストリーミング再生するときに配信されます。そのため、マーケターは、興味関心、場所、デモグラフィックなどの属性に合わせてニッチなオーディエンスターゲティングを行うことができます。
一方、従来のリニア放送では、番組の視聴者全員が放送中に流れる同じ広告を見ることになります。従来の広告でターゲティングできるのは、せいぜい市町村規模の地理的地域です。ターゲット層には、その製品に何の関心もない視聴者も多数含まれているでしょう。
エンゲージメントの高いオーディエンス
OTT動画広告の視聴完了率は80%以上です。なぜこんなに高いのでしょうか。OTT広告の多くがスキップできないということもあります。しかし、それ以上に、ターゲティングの精度が高いため、視聴者にとってより関連性の高いものになっているのです。
一方、デジタルビデオレコーダー(DVR)が普及し、テレビコマーシャルを早送りする傾向に拍車がかかりました。今では、テレビ視聴者の半数以上がいつも広告をスキップすると言っています。このように、従来メディアでのマーケティングはなかなか厳しい状況です。
分析しやすい
OTTでは、アプリでコンテンツを選んだユーザー一人ひとりが個別にオーディエンスとなります。オーディエンスの構成人数が1人であるがゆえに、大勢が同時に広告を見た場合よりも属性が明確になります。
また、多くのOTT広告はインタラクティブです。視聴者はリンクをクリックしたり、オプションを選択したりできます。このようなインタラクションから視聴者の好みに関するインサイトを得られるため、マーケティングファネルに落とし込んでおけば、今後リターゲティングキャンペーンを仕掛けることができます。
一方、放送局やケーブルメディアプロバイダーは、番組視聴者の一般的なデモグラフィックしか把握できません。そのため、個々の視聴者をブランドとのエンゲージメントにつなげるのは困難です。
IDFAは不要
データプライバシーをめぐる状況が変化するなかでも、OTT広告では、規則を曲げることなく特定のオーディエンスをターゲットにできます。広告主はファーストパーティーおよびサードパーティーの貴重なデータを得られ、正確かつタイムリーな広告配信に役立てることができます。
OTTの未来
近い将来、より多くの人が、より多くのデバイスで、より高速なインターネット接続を利用するようになるでしょう。OTTのさまざまな側面を見れば、今後数年も成長し続けるであろうことがわかります。理由は次のとおりです。
技術の発達と普及
とにかく、OTTメディアの消費人口が増えています。
世界中の主要都市で5G技術が徐々に普及し始め、Starlinkのようなインターネットサービスも登場しました。インターネットインフラが成長し、より多くの人が好きなときに、自分のデバイスで、高品質のコンテンツを楽しめるようになってきています。ダウンロード速度の高速化は、より多くの人にコンテンツを届けるだけでなく、ユーザー体験を継続的に向上させていくでしょう。
2025年には、33億人がOTT動画を視聴すると推定されています。特にアジア太平洋地域ではその数が多く、2026年に13億4,500万ユーザーにのぼるとみられています。
広告への支出は拡大の一途
マーケターはOTTメディアへの支出を増やしつつ、従来チャネルへの投資も維持しています。米国では、OTT動画広告への支出が2020年(340億ドル)から2025年(630億ドル)にほぼ倍増する見込みです。
ポッドキャスト広告への支出も同じ傾向であり、推定では2025年に25億ドルを超えるということです。テレビ放送の広告収益は、当面650億ドル前後で停滞するとの見通しです。
OTTチャネルへの資金投入が増えれば、競争が激化し、コストが上昇する可能性もあります。OTT広告への投資は早いに越したことはありません。
模索とセルフサービスオプション
Netflixの広告付きプランの発表は、業界に激震をもたらしました(ほかの主要プラットフォームも同じような発表を行いましたが、あまり話題になりませんでした)。このような発表は、パブリッシャーがさまざまな収益モデルを試していることを示しています。
Hulu+は強固なセルフサービス広告プラットフォームを構築し、多くの広告主に出稿を求めています。Disney+、Netflix、HBOなどが、より活用しやすいデジタル広告商品に投資するのも時間の問題でしょう。
重要なポイント
- OTT(オーバーザトップ)とは、従来のテレビ放送やケーブルテレビではなく、オンラインでデジタルコンテンツを配信するサービスです。
- OTT広告によって、マーケターは、興味関心、場所、デモグラフィックなどの属性に合わせて、ニッチなオーディエンスを正確にターゲティングできます。
- 主なOTT広告モデルには、サブスクリプションビデオオンデマンド(SVOD)アドバタイジングベースドビデオオンデマンド(AVOD)、トランザクションビデオオンデマンド(TVOD)、無料広告付きテレビ(FAST)、ハイブリッドの5つがあります。ハイブリッドサービスやセルフサービスを提供するプラットフォームが増えています。
- 広告主は、幅広い広告フォーマットの中から、コンテンツやオーディエンスに合ったものを選ぶことができます。
- OTTは、今後数年で劇的に成長すると予測されています。オーディエンスが従来のメディアから離れ、インターネッインフラの向上がもたらしたストリーミングを選ぶようになったからです。