【まとめ】2023年:PCゲームマーケティングの基本
かつてはニッチな趣味とされていたゲームも、今や一般的な娯楽として浸透しています。朝の通勤通学電車では、中年のビジネスマンがキャンディーをクラッシュしていたり、10代の女の子がMinecraftで帝国をつくっていたりします。
私たちは、手のひらサイズのパワフルなゲームデバイスと、コロナ禍がもたらしたデジタルエンターテインメントへの需要の高まりに感謝すべきでしょう。
しかし、注目を集めているのはモバイルゲームだけではありません。過去数十年にわたり、一貫して成長を続けているゲーム分野があります。それは、PCゲームです。モバイルゲームのデベロッパーにとっても、今は参入のチャンスといえます。
「PCゲーマーは皆ハードコアゲーマーであり、『World of Warcraft』のようなゲームに青春の大半を費やしてきた」という思い込みは捨てたほうがよいです。現在のPCゲームのプレイヤー層は、かつてないほど多様化しています。今がなぜ参入すべきチャンスなのか、今回はその理由を解説します。
ゆっくりで平坦、しかし着実な成長
本題に入る前にこれだけは申し上げておきますが、長期的なマーケティングプランを練り、腰を据えて取り組む必要があります。「マーケティングに取り組めば、ユーザーがすぐにやってくる」とは考えないように。「そのうちバズるさ」などと声を掛け合いながら、6か月はマーケティングプランを変更しないようにしてください。 人気ストリーマーひとりにローンチ前のゲームをプレイしてもらう。これはマーケティング戦略とはいえません。
有料マーケティングとオーガニックマーケティングを組み合わせてこそ、真の成功を得られます。重要なのは段階的なアプローチであり、失敗を重ねながらオーディエンスに対する理解を深めていく必要があります。宣伝効果が出てくるまで時間はかかりますが、それに見合う成果が待っています。こうした一連の取り組みは、主に4つのステップに分けられます。
- 市場機会の理解
- Steamでの勝ちパターンの見極め
- UAチャネルの活用
- パフォーマンスの計測と最適化
ステップ1:市場機会の理解
あなたがインディーゲームのデベロッパーで、すばらしいゲームを作り上げているなら、わざわざ異なるジャンルで勝負する必然性はありません。とはいえ、ジャンルは市場調査の起点にうってつけです。
Steamのような市場で適切なジャンルを選ぶかどうかで、競争力と収益に大きな差が出る可能性があります。最初のベンチマークの設定に役立つ指標をいくつか紹介します。
- そのジャンルのゲームは何本リリースされているか
- そのジャンルのゲームは毎年何本販売されているか
- そのジャンルのユーザーあたりの平均収益は
これからゲームを売っていこうという場合は、まずは競争の少ないジャンルを選びましょう。次に、ターゲットオーディエンスについて掘り下げます。次の項目を確認してください。
- 自身のゲームのスタイルや雰囲気は
- 似たようなゲームはあるか
- どのような作風か
- (自身のゲームに類似する)ゲームをプレイしたストリーマーはいるか
- オーディエンスはどこでコンテンツを利用するか(例:Twitch、YouTube、Instagram、TikTok、Twitter)
ステップ2:Steamで勝つ
ターゲットについて理解したところで、その情報をもとに、最大規模のゲーム市場であるSteamで自身のゲームを売り込みましょう。SteamはApp Storeとは大きく異なり、認知度とダウンロード数を高めるための独自の要素があります。ここでは、Steamにある5万本のゲームの中で存在感を高め、月間アクティブユーザーが1億3,000万人というこのプラットフォームでプレーヤーを引きつける方法をいくつか紹介します。
デザイン
何より重要な要素は、「カプセル」と呼ばれるヒーロー画像です。この画像はオンラインストアで検索したときに表示されます。実店舗のショーウィンドウのようなものとお考えください。ショーウィンドウに巨大な看板を掲げている店もあれば、真新しい服をエレガントに飾っている店もあります。それと同じように、ゲーマーの興味関心を引くには、魅力的でプロ目線のデザインが必要ということです。
ランディングページ
訪問者がカプセルをクリックすると、ランディングページに誘導されます。ディズニーランドでは門をくぐって魔法の国に足を踏み入れるわけですが、ランディングページもそれくらいインパクトのある場所で、訪れた人々にゲームのルック&フィールを効果的にアピールできます。ですから、ゲームの画像、GIF、トレーラーを含め、さまざまな洗練されたアセットを用意する必要があります。
訪問者が最初に目にするのは画像であり、優れた画像を使えばゲームの内容を伝えやすくなります。トレーラーは短くし、プレイ映像を多めに盛り込みましょう。また、オーガニックな検索で見つけやすくなるように、ゲームのタグ付けをしておきましょう。
ウィッシュリスト
最後に、ゲーマーは次の3つのうち1つを選択します。
- ゲームを購入する
- ゲームをウィッシュリストに追加する
- その場を離れる
Steamでウィンドウショッピングをするゲーマーは多く、ウィッシュリストは購入したいゲームを予約する手段になっています。ソーシャルな要素もあり、自分の欲しいゲームをフレンドに伝えたり、勧めたりできます。
パブリッシャーにとって、大量のウィッシュリストはまさに金鉱といったところです。市場での認知度を高めてくれるだけでなく、販売促進にもつながります。ゲームが発売されると、そのゲームをウィッシュリストに登録しているユーザー全員にメールで通知されます。ウィッシュリストに絡むコンバージョン率はこれまで非常に高く、パブリッシャーの持続的な売上確保に一役買っています。
ステップ3:UAチャネルの活用
ゲームの認知度を高めるには時間がかかりますが、広告予算があればその時間を短縮できるでしょう。ここでは、効果的なUAチャンネルについて紹介します。
パブリッシャーと契約する:あなたがインディーゲームのデベロッパーで、マーケティング予算と情報発信のためのコネクションが必要なら、パブリッシャーとの契約が適切な解決策になります。
アルファ版とベータ版をローンチする:ゲームをリリースする前に認知度や期待感を高めるだけでなく、ロイヤルティの高いプレーヤーの維持にも役立ちます。ベータ版を用意することで、ストリーマーやインフルエンサーにゲームを試してもらうこともできます。
インフルエンサーと連携する:『Among Us』や『Fall Guys』などのゲームは、ストリーマーがTwitchでゲームをプレイするようになってから爆発的に広まりました。すべてのゲームが幸運をつかめるわけではありませんが、複数のストリーマーやゲーム系インフルエンサーと連携し、プレイ体験をオーディエンスに共有してもらうことで、チャンスが広がります。Sullygnome、Playboard、HYPRなどのツールを活用して、同系統のインフルエンサーを探しましょう。
GDC、PAX、Tiny Teams、Summer Game Festなどのオンラインフェスティバルに参加する:サードパーティのパブリッシャーが主催するものであれ、Steamが主催するものであれ、オンラインフェスティバルは口コミによる認知度アップ、ウィッシュリストへの登録数アップ、売上アップにつながるといわれています。このようなフェスティバルに登録することが重要なのは、参加者の多くが影響力を持っており、新しいゲームに敏感だからです。
Meta広告、Twitch広告、YouTube広告:有料広告に予算を割けるのであれば、これらの3つのプラットフォームを活用して、ターゲットオーディエンスに効果的にリーチしましょう。競合のゲーム、ゲーミングPC向けのパーツ、各種パブリッシャーに興味関心を持つオーディエンスを見つけることができます(リマーケティングキャンペーンは除く)。TwitchとYouTubeはゲームストリーミングプラットフォームとしては現在最大規模であり、オーディエンスに直接語りかけることができます。ただ、最も効果的なのはストリーマーによる動画配信です。彼らが純粋にゲームを楽しんでいる様子からオーガニックに発生する反応、これに勝るマーケティングはありません。
クロスプラットフォーム広告:ゲーマーはさまざまなプラットフォームを利用するので、彼らがどこにいてもつながりを維持できるようにしておくことは大きな意味があります。これはつまり、モバイルやウェブなど、誰もがよく知っているチャネルでキャンペーンを実施するということです。さらに、Kabam、Playtika、Mistplayのような革新的なデベロッパーにならい、CTV広告で成長を促しましょう。バス停、地下鉄の駅、地下鉄車両、駅のプラットフォームなどでオフライン(OOH)広告を展開し、見る人を魅了してコンバージョンにつなげるという施策もよいでしょう。クロスプラットフォームキャンペーンの実施と計測については、こちらのガイドをご覧ください。
ステップ4:パフォーマンスの計測と最適化
フェスティバル、広告、ソーシャルメディアなど、あらゆるところから興味関心を集めることができます。収益性の高いキャンペーンやチャネルを特定するには、コンバージョンを計測し、正確に属性化する必要があります。
ただ、その経路は複雑です。ツイートを見て、CTV広告を見て、モバイル広告を見て、OOH広告を見て…というユーザーについて、コンバージョンをもたらした要因を特定するのは至難の業です。
マーケティング計測および分析パートナーと協力すれば、ゲームの購入につながったさまざまな経路をつなぎ合わせることができます。さらに、複数のデバイスにまたがるキャンペーンのパフォーマンスをリアルタイムで把握できます。ゲーム機向けにも販売する場合に、これは非常に重要です。
まとめ
- 市場調査を行い、ジャンルの競争性を見極め、ターゲットオーディエンスを理解し、コンテンツが利用される場所を特定する
- Steamで存在感を高めるには、魅力的なカプセルや洗練されたランディングページなど、デザイン要素に力を入れるべき
- Steamのウィッシュリストは、認知度の向上や売上の促進につながる。フレンドにおすすめのゲームを共有するソーシャルな要素もあり。うまく活用しよう
- パブリッシャー、アルファ版/ベータ版のローンチ、インフルエンサーとの連携、オンラインフェスティバルへの参加などの各種UAチャネルをマーケティングミックスに組み込むことが重要
- Meta広告、Twitch、YouTubeのなどのプラットフォームでの広告配信はターゲットオーディエンスに効果的にリーチできるが、ストリーマーを通じたオーガニックマーケティングの方がより大きな効果を見込める
- モバイル、CTV、オフライン、ウェブにまたがるクロスプラットフォームキャンペーンでリーチを広げ、それぞれの新しいチャネルの影響を計測する