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モバイルのパフォーマンスマーケティングをPC&コンソールに拡大する「面白さ」とは?ゲーム投資家が解説

執筆者 Shani Rosenfelder

ゲームの世界に変わらないことがあるとすれば、ゲームの世界は日々変化し続けるということです。ゲーム業界は常に新たな市場とオーディエンスを獲得し、収益と成長を促進しなければなりません。その必要性が、変化を促しているのです。PC&コンソール向けのゲームは何十年も前から存在していましたが、後にモバイルアプリが誕生し、ここ数年で世間を席巻しました。しかし現在、これらの孤立したプラットフォームが統合され始めています。

本ブログでは、今後ますます期待が高まるクロスプラットフォームゲームとPC&コンソールの展望について、ゲーム業界で長年の経験をもち、投資家でもあるEric Kress氏に話をうかがいました。氏はビデオゲーム業界(EA、Kabamなど)で26年以上の経験を持ち、投資家向けにビデオゲームに関する助言を行う投資アドバイザー、また業界向けの戦略アドバイザー(WB Games、SEGA、Google、Amazonなど)としても活躍しています。また、ポッドキャスト「Deconstructor of Fun」のホストも務め、ビデオゲーム業界最大のビジネスリーダーコミュニティの成長に尽力しています。

モバイルゲームはPCやコンソールへの対応を始めています。これら複数のプラットフォームでパフォーマンスマーケティングを行い、ターゲティングやアトリビューションを最適化することによって、そのメリットをもっとも享受できるのはどのモバイルゲーム企業でしょうか?

Kress氏:2つの見方ができると思います。1つは、もっともメリットを享受できるのは大企業という見方。こうした企業はゲームの規模も大きいため、より多くの人々にリーチでき、ターゲティングも効果的に行えます。また、これらの戦略をマーケティングの観点から実施するための予算も潤沢です。一方で、小規模企業のほうがより多くのメリットを得られるという見方もあります。テレビ広告などに多額の資金を投じるよりも、ダイレクトマーケティングを行うほうがユーザーの目に留まる確率が増えるからです。 

理想は、適切なターゲット広告やアトリビューションの実施、またその他成功に寄与するさまざまな要素を正しく理解することです。私たちはユーザーの関心を引くことでゲームの購入につなげています。そのため、正しいアプローチを行うためのこうしたツールや技術は非常に興味深いものであり、実際にとても重要な役割を果たすでしょう。 

ですから、大規模企業にとって有益なのは確かですが、スタートアップや小規模企業がこの分野で競争する助けにもなるでしょう。コンソールやモバイルで見られる一般的な傾向の1つは、収益の大半を大手が占めているため、より低い予算で開発やマーケティングをしているゲームの入る余地がないということです。上位10位のタイトルの顔ぶれが毎年同じであるのも、これが理由です。だから、使えるツールを活用して競争しようというのは非常に良い傾向であり、一部の小規模企業にかなりの優位性をもたらすかもしれません。

PC&コンソールのマネタイズモデルは変化するでしょうか。ゲーム購入モデルから、ゲーム内課金を実装したF2P(無料で遊ぶ)モデルに移行する可能性はありますか?

Kress氏:この件に関しては、以前と違う見方をするようになりました。「フォートナイト」はコンソールにおける、F2Pの新たな可能性を築いたように見えました。しかし、F2Pの観点で言えば、コンソールではとりわけ、「フォートナイト」以外の成功例はほぼありません。もちろん、成功したゲームも多少はありますが、いずれも規模を拡大できず、ユーザーを維持することもできませんでした。

私は、コンソールにはプレミアムプラスが最適なモデルではないかと考えます。というのも、コンソールはすでにある程度普及しています。500ドルもするコンソールを購入した人は、すでにゲームをしようという意欲をもっている人です。コンテンツを通して彼らを満足させ、必要な場合はいくらでも積極的に課金しようと思ってもらう必要があります。また、コンソールゲームへの需要は価格にそれほど左右されません。1本の価格を40ドル、50ドル、60ドル、70ドルに設定しても、売れ行きがそこまで変わるわけではありませんよね。

そのため、このようなモデルでは、まずプレミアムなサービスを販売し、それにマイクロトランザクションを追加するのが合理的です。これはモバイルから得られる貴重な学びであり、適切な戦略だと思います。ただし、問題はコストがかかることです。60ドルや70ドルもの価値があるゲームを開発するには費用がかかります。とはいえ、多くの場合、これがコンソールとPCのモデルであることも確かです。もちろん、PCには「リーグ・オブ・レジェンド」や「Dota」といった規模の大きなF2Pタイトルもありますが、F2Pでここまで収益を挙げられるゲームは極めて稀です。 

AppsFlyerゲーム PC&コンソール

あるモバイルゲーム制作企業が、ミッドコア、あるいはよりカジュアルなゲームを中心としたポートフォリオを展開しているとします。ハードコアゲームはありません。この企業はPC&コンソールへの拡大を検討しています。モバイルには欠かせないパフォーマンスマーケティングとアトリビューションがPC&コンソールにも使えるようになった今、この企業にどのようなアドバイスをしますか?

Kress氏:モバイルからPC&コンソールへの拡大に関しては、有効なジャンルは限られていると思います。コンソールではなおさらです。拡大はかなり厳しいと言えるでしょう。確かに、「原神」は大成功を収めました。しかし、あのゲームには何百万ドルものコストが投じられました。誰にでもできるわけではありません。 

とりわけ最大の課題は、モバイルとコンソールでは適したジャンルが異なるということです。モバイルとPCの場合はどちらでもプレイできると考える人が多いので、コンソールよりハードルは低いと思います。モバイルで成功したさまざまなゲームはPCでも成功しているため、良い進出機会となるでしょう。しかし、適したジャンルの見極めに失敗すれば、大きな成功はできません。つまり、コンソール、モバイル、PCをまたいだ複数のプラットフォームでプレイできる、適切なジャンルを選ぶ必要があるということです。RPGやシューティングゲームはその一例です。

基本的に、ビジネスモデルは明確です。もし独自のスタンドアロン製品やタイトルを開発できれば、マージンを大幅に節約できます。また巨大な規模を持つPCなら、多くのユーザーが見込めます。つまり、PCでユーザーを収益化できれば、大きな成功を見込めるということです。そう簡単にはいかないでしょうが、不可能ではありません。PCは世界規模の巨大なチャネルですから、ビジネスチャンスも巨大なのです。 

コンソールビジネスもまた、かつてないほど好調です。ハードは飛ぶように売れ、人気タイトルも次々と登場しています。たとえば、「ハリー・ポッター」シリーズの販売数は現時点で1,500万本を突破し、異例の大ヒットを記録しました。また「ディアブロ」もPCとコンソールでの発売が決まっており、「ファイナルファンタジー」や「グランド・セフト・オート」のコンソール版もあります。コンソールビジネスは、今後大きく成長するでしょう。ハードやタイトルの販売サイクルはおそらく過去最高に達し、その後の流れにも良い影響を与えると思われます。なので、私はコンソールビジネスに非常に楽観的ですし、一部のタイトルはPCにも拡大しています。同様に、モバイルにとっても、PCへの拡大が市場の拡大につながります。 

ゲーム制作企業にとっては、新たなゲームをどう生み出すかを考える時期にきています。コアなゲームに集中するのではなく、さまざまな種類のゲームを、です。従来の方法ではビジネスを拡大できなくなっているため、主要企業に対抗しようとして新規参入を図ることは、ますます難しくなるでしょう。変えるべきは、デザインです。つまり、大衆市場向けのゲームをデザインすると同時に、収益化を最大化する仕組みをデザインするということです。たとえば「MONOPOLY GO!」は競争の激しい市場で成功した一例で、昨年は「Marvel Snap」も人気作となりました。

突破口となり得るのは、大衆市場向けの自社IP(知的財産)と、比較的シンプルに操作できるゲームです。しかし、従来のパズルゲームやストラテジーゲームでは苦戦すると思われます。ユーザーが慣れるまでに時間がかかるでしょうし、大衆市場向けのゲームで高度な収益化を導入すれば、ユーザーあたりの収益ははるかに低くなる可能性があるからです。 

つまり、ストラテジーゲームならユーザーあたり20ドルの収益を生み出せるのに、こうした新たな種類のゲームでは5ドルしか生み出せない、ということが起こるわけです。よって、大衆市場向けのゲームにユーザーが移行すれば、ゲーム市場全体が縮小します。また、以前なら課金していたロイヤルユーザーはこうした新しいゲームには課金しないでしょうから、やはり厳しい状況が見込まれます。

PC&コンソールのアトリビューションにはどのようなメリットがあると思われますか?

Kress氏:異なるプラットフォームでユーザーベースのグラフを構築し、それらをすべて統合できれば、非常に強力なものになると思います。これにより、すべてのプラットフォームでのユーザーアクティビティを基にしたターゲティングが可能になります。したがって、特にAppleやAppleのプラットフォームのプライバシーポリシー変更にも戦略的に対応できる、非常に価値ある手法になると思います。 

AppsFlyerゲーム PC&コンソール

PC&コンソールはまったく新しい未知の世界となりますが、何に興味を引かれますか?

Kress氏:PC&コンソールでのプログラムやマーケティングが売上に直接影響していると数値で証明できれば、かなり有益なデータとなるでしょう。ただし、これまでは実現しませんでした。ですから、PC&コンソールにユーザーを効果的に引きつける方法がわかれば、大きく前進するかもしれません。PC&コンソールはどう進化していくのか、またゲームマーケティングにもっとも効果的なチャネルはYouTubeなのか、標準的な広告なのか、あるいはTwitchや一部の人々に人気の他のチャネルなのかは興味深い話題です。

モバイルゲームのマーケティング担当者たちも、当初は手探り状態で売り込みを始めました。こうした初期のパフォーマンスマーケティングは長い時間を経て、やがて大半のパブリッシャーにとって欠かせない要素となりました。私は数値を分析するのが仕事ですから、成果を数値化できるこの方法は理にかなっていると思います。コンソールやPCでも実現できれば非常に面白いと思いますし、興味深いですね。

Apple Vision Proが発売されました。これはゲームの拡張現実(AR)や仮想現実(VR)を推進するプラットフォームとなるのでしょうか?

Kress氏:端的に言えば「ノー」ですが、その理由を詳しくご説明します。ARやVRの可能性を語るには、まず過去の進化を念頭におく必要がありますが、多くの人は過去を忘れがちです。Appleが携帯電話市場に革命を起こした理由は、彼らが素晴らしいデバイスを発明したことはもちろんですが、このデバイスが70億もの市場規模を持っていたからです。 

誰もがスマートフォンを使うだろうということは、初めから比較的明白だったのです。Appleだから成功するということではなく、誰もがすでにフィーチャーフォン(スマートフォンの前身)を持っていたのだから、スマートフォンを受け入れる消費者市場も無限に広がっていたということです。Appleはまた、キャリアからの補助金モデルも生み出しました。このモデルなら、Appleで購入すれば3,500ドルもするデバイスが、月々わずか500ドルから800ドルで利用できるのです。消費者にとってはるかに購入しやすくなったことは明らかです。 

また、スマートフォンはどちらかといえば、生産的でコンテンツ消費に利用されるデバイスです。ゲームはおまけのようなものでした。同様に、ARやVR環境もゲームでは普及しないと私は考えます。現時点で最高のゲーム体験を味わえるのは、テレビに接続された専用コンソールです。20年前からずっとそうです。 

よって、Apple Vision Proでのゲーム体験は、ARやVRを売り込む最適な方法ではないと思います。より重要なのは、没入感のあるソーシャル体験ではないでしょうか。たとえば「スタートレック」に登場する、世界を疑似体験できる装置のような。これは将来的には実現すると確信しています。しかし、こうしたデバイスが人々の興味を引き、大衆市場に浸透するようになるには、長い時間がかかるでしょう。客観的な業界アナリストとして、これはまだ一般的なデバイスではないと思います。

この分野は今後どう進化していくでしょうか。また、優勢なのはどのプラットフォームだと思われますか? 

Kress氏:コンソールビジネスは、今後5年間でこれまで以上に成長すると思います。今年はコンソールにとって画期的な年になるでしょう。Nintendoからもおそらく次世代Switchが発売され、爆発的な人気を得るでしょう。進化はこれからも続きます。IPはモバイルでもより価値が高まり、多くのオーガニックユーザーを獲得することが見込まれます。

一方、VRやAR、ブロックチェーンやほかの主なプラットフォームは市場からの需要が十分でないため、今後5年間は大きな変化はないと思います。そしてPCですが、PC市場は現在、一種のルネッサンスともいえる動きに沸き、注目を集めています。

その背景には、ブロックチェーンの失敗や、モバイルを取り巻く厳しい状況があります。だからこそ、あらゆる人に大きな機会をもたらす、極めて巨大で広範なPC市場への関心が高まっているのです。まるで期待が現実を創りだしたような話ですが、多くの人が興味を持って注目することで、PC市場はより成長し、さらに多くの可能性を持つようになるでしょう。SteamやEpic、Webゲームの可能性も然りです。 

Shani Rosenfelder

Shaniは、AppsFlyerのコンテンツ&モバイルインサイトの責任者。10年以上にわたり、さまざまな大手オンライン企業や新興企業で、コンテンツやマーケティングの重要な役割を担ってきた経験を持つ。創造性、分析力、戦略的思考を兼ね備え、革新的なコンテンツ主導型プロジェクトを通じてブランドの評判と知名度を高めることに情熱を注いでいる。
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